EXHIBITION | TOKYO
PUGMENT(パグメント)
「Never Lonely」
<会期> 2020年6月6日(土)- 6月20日(土)
<会場> Taka Ishii Gallery (complex665)
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
ストーリー|
生まれた 地 を 離れ 遠くまで 来た
新しい 地 で 出会う
協力 して 共に からだ
ここ で 生きて 行く
本作品は、出身地を遠く離れて日本へやってきた洋服を移民に見立て制作されています。展示されている服は、日本に輸入された海外製品の古着を異なる生産国同士で組み合わせ、安全ピンで接合しています。服を包むターポリン素材の衣類カバーには、日本のファッション誌で古くからある「置き画」という方法で撮影した写真が印刷されています。置き画とは、服を人に着せずに平面に置いた状態で撮影する手法です。置き画の歴史を紐解くと、1868年に遡ります。日本の洋装は、主に明治天皇が洋装化を指導したことからヨーロッパから流入し、その後1945年にGHQによる占領でアメリカの日常着が流入した時期を通して一般化しました。和服は一着に小物を添え完結するのに対し、洋服は複数のアイテムを組み合わせて着用するため、日本人向けの雑誌上でコーディネートを指南するために置き画という撮影方法が生まれました。また、洋服同士を接合するのに使われている安全ピンは、2016年に英国で欧州連合離脱が決定した際や、ドナルド・トランプが米大統領選で勝利した後に、移民やマイノリティグループに対してのヘイトクライムに対抗する意思を示すために安全ピンを服につける運動を参照しています。異なる時代や文化の要素が集まり混ざることで新たなアイデンティティが生まれる時代背景と、海外文化の流入により独自の文化を発展させてきた戦後日本の服飾史を共通したプロセスと捉え、本作品に重ね合わせています。
Never Lonely
13 works ¥160,000+tax
Never Lonely Shirts
全 11 種類 ¥75,000+tax
古着のシャツを素材にしたユニークピースのシャツ。二人羽織のように重ねられ、右胸は安全ピンで接合されている。
PUGMENTの作品の多くは、現代に流通する日常着についての考察を起点として、洋装化以降の日本の服飾史や文化の変遷、衣服と人・都市・社会との関係に焦点をあてた丹念なリサーチに基づきます。路上に落ちている衣服をiPhoneで撮影し、同じ形の既製服の全面に転写することで衣服を再現する「MAGNETIC DRESS」(2014年)、古着のミリタリーウェアを燃やした灰で衣服を作る「IMAGE」(2016年)、インターネットで収集した衣服の写真を切り抜き、ターポリンに印刷して衣服を作る「Spring 2018」(2017年)、人類滅亡後の世界で、意思や感情を持ったファッションが衣服に憑依するという架空のストーリーを組み立て、近未来の防護服をイメージした服が登場する「1XXX-2018-2XXX」(2018年)、原宿を中心として発展した日本のファッション史に焦点を絞った「Purple Plant」(2019年)など、写真、映像、パフォーマンスなどの多様なメディアを用いてコレクションを発表してきました。いずれの作品も、衣服が持っている文脈や背景が、ファッションのみならず歴史や社会にどうリンクしているのかを観察する視点を持っています。ファッションのもつ消費サイクルと流行、その破壊の力までをも視野に入れ、流通システムそのものの性質を俯瞰しながらも、皮肉な自己言及のみに陥らず、デザイナーが自らそれをポジティブに再変換しようとする思考に溢れ、過去の歴史と現在が錯綜する状況が作品の中に生まれています。
2020年5月にはプロジェクト「Pugment Books」をローンチ、過去に発表したコレクションの制作過程で生まれた写真やテキストをもとに、本の1ページに見立ててデザインしたアイテムを展開しています。PUGMENTの複眼的なアプローチは作品だけにとどまらず、その活動や制作プロセスを展覧会として公開したり、ギャラリー、書店、セレクトショップとジャンルの異なる会場で同時多発的に展覧会を行う姿勢にも表れています。そこには様々な隔たりを超えて人々を繋ぐことへの意識と、人の営みを通して衣服を製作することへの関心が貫かれています。
Taka Ishii Gallery (complex665)(タカ・イシイギャラリー)
https://www.takaishiigallery.com/jp/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 3F
tel:03-6434-7010