EXHIBITION | TOKYO
大島成己(Naruki Oshima)
「Figures」
<会期> 2015年11月7日(土)- 12月2日(水)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
2015年11月7日(土)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、大島成己の個展”Figures”を開催いたします。
前作”haptic green”では、焦点距離を変化させて撮影した 200 枚以上のカットを格子状に繋ぎ合わせ一枚の写真として再構成することで、奇妙な風景を作り上げました。それは、私たちに未知の視覚体験をもたらすとともに、視覚によって得るイメージ(=印象)というものがいかに曖昧であるかを知らしめ、人が目の前の対象を知覚する際の認識行動に揺さぶりをかけることに成功しました。
本展が初公開となる新作”Figures”では、「風景」から「人体」へとテーマを変え、視覚認識の問題から他者に対する知覚認識の問題へとコンセプトをより広げます。
私たちは通常、他者を認識するために、容姿や表情、言語だけでなく、社会的属性やスキル、関係性の度合い、また自らの価値観や過去の経験に基づいた主観的な推論等を統合して印象形成を行います。しかし大島は、こうした統合的判断による他者認識によって、却ってその隙間からぽろぽろと「重要な何か」が滴り落ちているのではないかと感じてきました。”Figures”は、こうしたものを掬い上げ、そこにしか見ることの出来ない存在を現そうとする試みです。
この機会に是非ともご高覧ください。
■ 作家コメント
新しいシリーズ作品は人体をモチーフとしている。これまで風景、静物を主なモチーフとして撮影してきたが、人体はほとんど扱ったことがなかった。1990年から数年間、写真製版シルクスクリーンで黒い人影のイメージを何点か制作したものの、誰かを特定できない黒いインクの皮膜として人影を表すだけだった。人体というモチーフは写される人の社会的な背景、文脈が強く表れてくるので、そうした意味文脈を相対化した果てで表現を開始した僕にとっては、人体を扱うのはとても厄介で、ずっと避けてきたモチーフだった。
しかし、今回、あえて人体を選んでみたいと思うようになったのは、人体固有の触覚的な塊への興味とともに、haptic green シリー ズで見いだした技法の可能性を実験的に展開してみたいと考えたからだった。この技法はクローズアップした無数のショットをスティチングで統合し、物の部分・細部の関係を取り結んで事後的に全体を表すことができる。そこで現れてくるのは、求心性の強い全 体がまず措定されて部分がそこに隷属する関係でなく、様々な部分がまず主張し、それらが関係を取り結んで全体となる関係だ。つまり部分と全体が拮抗する緊張関係に対象を持ち込むことができる。ここに従来の写真表現とは別の新しい可能性があると考えている。
今回、この技法を通じて、部分と全体が拮抗する関係において人体の触覚的表面を表現したい。それは人を記号的に理解、解釈するのではなく、言葉で表しがたい触覚性において捉え直すものだ。と言っても、その触覚性を抽象的な、あるいはアノニマスな存在として完結させるのではなく、そこにその人の固有性が浮かび上がるようにしていきたい。その固有性とは社会的な意味、ステータスから離れたところでのその人自体の存在性で、それを捉えることにおいてしか、人体という厄介なモチーフを扱う可能性は無いのではと思えている。
2015年10月 大島成己
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツビューイングルーム新宿)
http://ycassociates.co.jp/
東京都新宿区西新宿 4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731