EXHIBITION | TOKYO
小出ナオキ(Naoki Koide)
「イオニコニアン:生まれなかった王国の遺構」
<会期> 2023年5月20日 (土) – 6月17日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
この度小山登美夫ギャラリーでは、小出ナオキ展「イオニコニアン:生まれなかった王国の遺構」を開催いたします。
作家にとって弊廊での10年ぶり6度目の個展となる本展では、陶芸による立体作品をメインに、ドローイング、新たな試みとなるミクストメディアの平面作品を発表。すべて新作での構成となります。
【小出ナオキと作品について
家族や身近な存在への視点 ユーモラスに、不思議な姿に表す】
小出ナオキは1968年愛知県生まれ。1992年に東京造形大学造形学部美術学科を卒業し、現在は千葉県を拠点に制作活動を行っています。
活動初期に、おもにFRPや木などを素材とした立体、写真作品を制作したのち、2010年滋賀県立陶芸の森での滞在制作より、セラミックでの作品制作を開始。
自身「(陶芸の)焼成という区切りの時間が、自分の気持ちのタイミングと一番合う」と語るように、現在まで継続する手法となっています。
また今までの作品、展覧会では、母親の他界や、自身と恋人、結婚式、新居、子供の誕生など、小出の個人史ともいえる生活の転機がテーマとなっていました。
家族や身近な人々や生き物を、どこかユーモラスで、まるで夢の中のような、時空や現世を超越したような姿にする表現。
それは私たち鑑賞者に共通するような記憶を刺激しながらも、不可思議な愛らしさや幸福感があり、小出の周りの存在へのあたたかな視点が感じられました。
【新作展「イオニコニアン:生まれなかった王国の遺構」
自分の心の表れを正直に表現した、壮大な作品世界】
本展のタイトル「イオニコニアン」は実際には存在しない時代の名称であり、小出の造語です。「生まれなかった王国の遺構」、自分以外には見えない、見えなくてもいい、フィクション、ファンタジーの世界という意味合いがこめられています。
小出は、本展の新作において「他者の存在や目を気にせず、自分の心の表れを正直に表現」するようになりました。
新作の大きな塔のような作品「聖遺物」は、はじめは「骨壺」のイメージから、手を動かし、自身の中の気持ちの対話をすることにより、だんだん大きく、塔や遺跡、チェスのキングやクィーンのようなものができたと言います。通底する「家族」という大きなテーマをあえて説明的、直接的でない、いつどこのものかわからないような「家族の魂の器」という抽象的な形に昇華しています。
そのきっかけとなったのは、ここ数年行っているこどもみらい園「アート室」での、発達に悩みをかかえる子どもたちとのセッション。子どもたちが自分の欲する色や形や動きで作品を作り、他者の理解を介在させない姿勢は、小出自身のバイアスを解放させ、作品制作の余地を大きく広げました。
また、制作での「負荷や制約」も大事な要素ととらえるようになりました。
大きな作品は分割して、真ん中のパーツは薪釜で焼き、他はガスで焼成し、それぞれのパーツで違う手法をとる。また下絵具のほか釉薬も使い、一つのオブジェに違う色合いや印象をいれていくことで、その負荷に見合っただけの理由と説得力がそなわり、自身の限界を何倍も飛び越したしたものが現れてくる。
途方もない手数をかけているにも関わらず、そこには小出が自分の心に真摯に向き合い、他者の目から自身を解放できた、表現の苦しくも楽しい喜びや大きな決意が感じられます。
思考のバイアスを超え、物理的な負荷から生まれた、ありそうでない小出の壮大で楽しい作品世界。どこかクスッと笑ってしまうような不可思議な魅力にあふれています。
「イオニコニアン」なんて時代はないようでいて、もしかしたら本当にあったのかもしれない、、、まるでパラレルワールドに迷い込んだように私たちの想像力を刺激し、新たな視点をもたらしてくれるでしょう。ぜひご高覧ください。
TOMIO KOYAMA GALLERY(小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6434-7225