EXHIBITION | TOKYO
ミスチーフ(MSCHF)
「Material Values」
<会期> 2025年2月1日(土)- 3月22日(土)
<会場> NANZUKA UNDERGROUND
<営業時間> 11:00-19:00 日月休
この度NANZUKAは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点とするアート・コレクティブ、MSCHF(ミスチーフ)による新作個展「Material Values(マテリアル・バリュー)」を開催いたします。
2024年1月に本展のティーザーとして3110NZ by LDH kitchenで開催された国内初の個展「No shoes. No phone. No service」に続く二度目の展覧会となる本展は、ペインティング、インスタレーション、オンラインシステムと接続された装置と一体化した彫刻作品など、3つの異なるメディアを用いた新作を発表します。
MSCHFは、2019年より活動を開始し、人類の文化、政治、あるいは貨幣社会といったシステムの不合理性や滑稽さを暴き出し、それを利用して精密に計算された介入システムを視覚表現を用いながら提示しているコンセプチュアル・アート・コレクティブです。これまで、NYのPerrotin(2022、2024年)、ソウルのDaelim Museum(2023年)での個展の他、ストックホルムのSpritmuseumにて開催された「Andy Warhol. Money on the Wall」(2024年)や、LAのJ. Paul Getty Museumにおけるグループ展「Blood: Medieval / Modern」(2024年)にも参加するなど、アメリカ国内外で幅広く作品を発表しています。
本展のタイトルにもなっている「MATERIAL VALUE SCULPTURES」は、現代の高度資本主義社会におけるアートと物質的価値の関係を、ユーモアを交えて再定義するシリーズです。この作品では、奇妙なポーズを取った人間の彫刻が登場し、台座に内蔵されたデバイスを通じて原材料であるインジウムの市場価値をリアルタイムで追跡します。インジウムは、半導体産業やLED素材として需要が高まり続けるレアメタルの一種であり、価格変動が激しい特徴を持っています。インジウムの市場価値が作品の価格を上回った瞬間、装置がその融点まで温度を上げ、彫刻を溶かして自壊し始めるように仕組まれており、アートの本質的な価値と物質的価値の乖離をシニカルに指摘しています。シミュラークルとしてのアートの価値のみならず、物資的価値のインフレーションもまた、私たちが生きる高度資本主義社会においてはシミュレーション原理に基づくシステムの一部にすぎないという事実をこの儚い自己破壊によって露呈させているかのようです。
「Animorph Painting」シリーズは、アメリカの子供向けSF小説「Animorph」(アニモーフ)における、人間が動物に段階的に変身する描写に着想を得ています。レンブラントやラファエロといった美術史上の古典的肖像画を現在のアイコンへと「変身」させることで、美術史的変遷を応用しながら、美やアートの定義が流動的であることを仄めかします。本展では、NANZUKA所属作家である空山基の「セクシー・ロボット」をモチーフとしたバージョンを含む4点を発表します。
また、「RAIN CUBICLE SCULPTURE」は、アメリカのオフィスで一般的なパーテーションで区切られたオフィス・キュービクルにパネル張りの下がり天井を組み合わせたインスタレーション作品です。電源が供給される限り、オフィスに雨が降り続けるこの不条理な仕掛けは、現代社会における労働の退屈さや無意味さを暗示し、資本主義が生み出す労働の矛盾を鑑賞者に直感的に体感させます。
本展「MATERIAL VALUES」における3つの異なる実践は、マルセル・デュシャンのレディメイド作品やアンディ・ウォーホルの《ブリロ・ボックス》や 《キャンベルのスープ缶》などをめぐる、アートの定義や価値についての歴史的な議論を彷彿とさせますが、MSCHFはこれらの議論を、現代の経済構造やテクノロジーを背景に、悪戯めいた作品の形式に昇華させています。
また、本展に関連して、MSCHFのこれまでの取り組みを総括した書籍「Made by MSCHF」をはじめとした、彼らの魅力が凝縮されたグッズを2月1日よりNANZUKA Online Storeにて数量限定で販売予定です。
本展を皆様にご高覧いただけますと幸いです。
NANZUKA UNDERGROUND(ナンズカアンダーグラウンド)
https://nanzuka.com/ja
東京都渋谷区神宮前3丁目 30-10
tel:03-5422-3877