<会期> 2021年3月6日(土)- 4月10日(土)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-18:00 日月祝休
渡辺えつこは、国立デュッセルドルフ芸術大学でゲルハルト・リヒターに師事し、以来、約30年間に渡りドイツを拠点に活動しました。現在は日本にスタジオを構え、作品を制作しています。 渡辺の絵画は、TVのモニターに映された映像や、解像度の荒い画像を思わせる場面を写実的に描く絵画などを発表してきました。瞬間的に「画像」へと変換された一場面を、手作業をともなう絵画という手法によって、画像の歪みやノイズまでを丹念になぞるようにして描くその作品は、「画像」と「絵画」のあいだにある複数の時間の層や、デジタルとアナログのあいだにある視覚認識の差異を改めて浮き彫りにします。
母袋俊也は、東京造形大学に学び1983年に渡独。フランクフルト美術大学絵画・美術理論科でライマー・ヨヒムス教授に学ぶなど、渡辺と同じく、ドイツでの活動歴をもつ画家・美術理論家です。2019年には、自身の美術論集を編纂した『絵画へ 1990-2018美術論集』も出版されました。母袋は、制作と理論の双方から「絵画におけるフォーマートと精神性」についての思索を深めてきました。その思考は、画家のグリューネヴァルトが感染症の治療を行う施療院のために描いた《磔刑図》から着想を得た絵画や、アンドレイ・ルブリョフのイコン画をモチーフにした近年の〈Qf〉系絵画に結実しています。
二人の画家が、絵画という実践を通して、さまざまな「対置」を展開する本展を、ぜひ、ご高覧ください。
【アーティスト・ステートメント】
「Chamber」について
描くために写真を使う時、壊れた画像を使うことがある。絵となるイメージが広がる故に。
西洋では文化のあらゆる局面で窓の意味性は強い。残念ながら今日の日本の建物で窓の存在感は薄い。
4年程前に住んでいたアパートで、目の前に高層ビルが建つことになった。目の前に広がるであろう窓の光景に期待が膨らみ、描くことを妄想していた。夜景の窓の光に目が誘われる。しかしながら、これらが作品として展開し始めたのは昨年になってからだった。
写真にデジタルレタッチすることにより、窓の外側、内側だけではないイリュージョン的な空間の歪みが生じる。そこはまた新たな絵のイメージが入り込む余地になる。
元々は一つの画面上に抽象性も具象性も共存していた絵画。今日は再び画面上に多様なエレメントが共存し、独自の言語として成り立たせることのできる時代でもある。Chamberは画面上にさまざまな様相を映し出しながら共存し無限に広がる。
2021.1.25 渡辺えつこ
Gegenüberstellung / confrontation 対置」展を前に
僕が絵を描くのは、知っているものや見えているものを描くことなどではなく、世界を見てみたい、世界を触れてみたいからに他ならない。
なぜならまだ僕たちは世界を知らないのだから。
そしてリアリズムが現実の肯定だとするならば、僕をイデアリストと言った人の考えを肯定したい。
僕はフォーマート(画面の比率)と精神性の相関をテーマに制作展開してきている。それは〈TA〉〈奇数連結〉〈バーティカル〉〈Qf〉〈Himmel Bild〉の系列として体系を形成してきた。
本展では正方形フォーマート〈Qf〉系を出品する。
2001年に開始された〈Qf〉系は、ルブリョフの《聖三位一体》、イエスの手、阿弥陀如来の印相をモデルとして2009年以降は90cm角の板を支持体とする〈Qf・Holz 90〉として取り組まれ、近年では正像と色彩のない鏡像を立方体の2面に配する〈Qfキューブ〉が試みられている。
さて一体「絵画が現出する場」とは? 絵画/像は「現実・リアルの世界」と「精神だけの非物質の世界」のこの二つの世界のわずかに重なり合う両義の場に薄い膜として生成し、精神の世界を背景にリアル、現実の世界に働きかけるのだと僕は考えている。〈Qfキューブ〉が模索しようとするのはその架空の空間性であり、そこでは無数の像が積層され立方体を形成しているのだ。
今回は、その〈Qfキューブ〉のための新作〈Qf・Holz 90〉2点、そして小品〈Qf piece〉の出品となる。
2021.1.20 母袋俊也
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツビューイングルーム新宿)
http://ycassociates.co.jp/
東京都新宿区西新宿4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731