EXHIBITION | TOKYO
クリスチャン・マークレー(Christian Marclay)
「Voices」
<会期> 2021年11月24日(水)- 2022年2月26日(土)
<会場> Gallery Koyanagi
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休 ※冬季休廊 2021年12月26日-2022年1月10日
ギャラリー小柳では、2021年11月24日(水)から2022年2月26日(土)の会期で、クリスチャン・マークレーによる個展を開催いたします。
「Voices[声]」と題された今回の個展では新作のコラージュと木版画の技術を取り入れた大型作品が発表されます。それらは、マークレーがこれまで続けてきた、アートとポップカルチャーから見出した素材をサンプリングし、サウンドとイメージの関係を考える試みに連なるものです。
今回発表されるコラージュはすべて昨年マークレーがロックダウンを経験した際につくり出されたものです。
「コラージュのこの新しいシリーズは2020年の初めてのロックダウン期間に制作されたもので、その当時パンデミックにより私はロンドンのスタジオでひとり作業することを余儀なくされました。これらの作品群は私たちの誰もがその時、そして今でも感じている、パンデミックや民主主義の衰退、独裁的なリーダーの出現や集団的な人種差別、さらには環境破壊などからもたらされる恐れや不安を映したものです。」
《Toxic Talk[害のあることば]》と題された一連のコラージュでは、漫画やコミックから巧妙に切り出された怒った横顔のイメージが両端に配され、それぞれの口から出ているくねくねとしたラインが互いに絡み合っています。それらのラインは声にかたちを与え、その声は私たちに恐れを想起させ、恐れはしばしば怒りへと導かれます。
恐れは鮮烈なコラージュ《Collective Emotion (1)[集合的な感情]》のテーマでもあります。漫画やコミックから集められた叫んでいる無数の顔をまるでコーラスのように赤い背景にコラージュした本作。積み重なった恐れがアンサンブルを成し、不安の集合体を暗示するかのようです。
本展のもうひとつのハイライトである木版画を用いた3点の大型作品は、デジタル技術と伝統的な手法を組み合わせて制作されました。やはり漫画やコミックからとられた小さなコラージュを原画とし、スキャンして拡大されたイメージを、木片を集積圧縮したOSB合板にコンピュータ制御で機械的に彫って木版をつくります。木版はエッチングの圧延ローラーにかけられ、合板の木片のパターンがもつ表現豊かでユニークな模様を作品に与えます。これらの木版画のシリーズは、ノルウェー出身の画家エドヴァルト・ムンクの代表作かつ近代美術の名作でもある《叫び》(1895年)のリトグラフに触発されたものであり、マークレーの《Scream[叫び]》のキャラクターたちは目には見えるが聞くことのできない、拡がっていくトラウマを表しています。
マークレーの最新の「グラフィック・スコア[図案楽譜]」の《No!》もまたコミックのコラージュで構成されています。《Manga Scroll》(2010年)など先行するグラフィック・スコアではオノマトペが本来もっているアクションから切り離されていたのに対し、《No!》では発声の仕方、表情による表現、からだの動きが演奏者のパフォーマンスを促すようにつくられています。
この新作のグラフィック・スコア《No!》は、現在東京都現代美術館で開催されているマークレーにとって初めての日本の美術館での大規模個展「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」展(2021年11月20日〜2022年2月23日)の関連企画でボアダムスのEYEによって、また小田原文化財団 江之浦測候所でのマークレーのパフォーマンス・プロジェクト「Found in Odawara」(2021年11月27日、28日)では巻上公一によって演奏されます。
クリスチャン・マークレーは1955年アメリカ・カリフォルニア州に生まれ、スイス・ジュネーヴで育ちました。ボストンのマサチューセッツ芸術大学とニューヨークのクーパー・ユニオンに学び、1979年にレコードとターンテーブルを楽器として用いたパフォーマンスを開始。これはターンテーブルを楽器として用いた最も早い例のひとつとされています。1980年代以降は即興的なパフォーマンスのほか、聴覚と視覚の結びつきを探る作品を映像、写真、彫刻、絵画、版画などメディアを往還してつくり続けています。
マークレーは世界の主要な美術館で展覧会を開催しており、近年の個展としてはロサンゼルス・カウンティ美術館(2019年)、バルセロナ現代美術館(スペイン/2019年)、アールガウ美術館(スイス/2015年)、パレ・ド・トーキョー(フランス/2012年)、ホィットニー美術館(アメリカ/2010年)、MoMA PS1(アメリカ/2009年)、パリ音楽博物館(2007年)、ストックホルム近代美術館(スウェーデン/2006年)、テイト・モダン(2004年)などがあります。2010年には古今東西の映画から時計や時間を表す場面をコラージュして現実の時間と同期する24時間の映像作品《The Clock》を第54回ヴェネチア・ビエンナーレで展示し金獅子賞を受賞。本作は世界各地の美術館で展示され高い評価を得ました。また音楽の分野でも重要な活動を継続しており、ジョン・ゾーン、エリオット・シャープ、ソニック・ユース、スティーブ・ベレスフォード、オッキュン・リー、大友良英ら数多くのミュージシャンと共演しています。
Gallery Koyanagi (ギャラリー小柳)
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