EXHIBITION | TOKYO
シャルロット・デュマ(Charlotte Dumas)
<会期> 2018年10月9日(火)- 10月13日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
平素より大変お世話になっております。
この度、シャルロット・デュマの映像作品「Work Horse」と「Nanae」の上映とポラロイド作品の展示を、六本木の小山登美夫ギャラリーにて5日間開催することになりました。ぜひご高覧ください。
【今回の展示について】
本展では、2018年長野県御代田町で開催の「浅間国際フォトフェスティバル」に出品されたシャルロット・デュマの映像2作品「Work Horse」(12分)「Nanae」(13分半)の上映と、同時期に撮影されたポラロイド作品を展示いたします。
シャルロット・デュマについては、そのカタログに書かれていたアイヴァン・ヴァルタニアン氏の文章を引用させていただきます。
シャルロット・デュマの写真の主なモチーフは、馬です。日本では南方の島々に生息する野生の馬を、米国では雪深い山々に働く使役馬を写真に撮って、独特なものの見方を提示しています。彼女の写真は、観客に落ち着いて集中して見ることを求めてくる写真ですが、それは感情に導かれた情景かもしれません。動物だけに向けられ続けた彼女のまなざしは、ゆっくりと落ち着いていて、そこには写真家が同じ時間に存在し、 同じ場所で、同じ空気を吸っていたことを実感させてくれます。
空間を共有することこそが、彼女の写真に潜んでいる力です。その力によって、観客である私たちに、本質的に私たち自身も動物なのだということを思い起こさせます。 彼女の映像作品では、カメラを長回ししながら、動物はゆったりとした姿勢のままじっ としていることが多いのですが、馬たちは黙想し、睡眠と覚醒の間を浮遊しているよう にも見えます。まるで、夢とうつつの境界を求めることに意味はない、とでも言っているように。なぜなら、ある部分では私たち一人一人も自分自身の夢想に捕らわれているのですから。
デュマの作品を見ていて気が付くのは、私たちが自然と動物を擬人化して見てしまうということ。そして、私たちが動物たちをどうとらえるかは、私たち自身の人間性のバロメーターにもなっているのです。写真とは、本質的に関係性について思考することであって、優れた写真は、観客である私たちに対象と自分自身との関係を理解することへと導いてくれるのです。
(浅間国際フォトフェスティバルカタログ、2018年)
今回の展示は、アーティストに無理を言って、急遽やらせていただくことになりました。シャルロット・デュマさんの作品を知ったのは、ポール・アンドリュースというオランダのギャラリーがアートフェアで見せていたのがきっかけです。そのあと、日本のとあるギャラリーのコレクションでみたり、最近ではGallery916で展覧会を見て、ポラロイドの作品を買ったりして。。。
今回、「浅間国際フォトフェスティバル」でこの2つの映像作品を見て、ぜひ、自分のスペースで流したいという衝動にかられました。眼差しと時間、むこうからやってくる美しい瞬間がとてもすばらしいです。
ヴァルタニアン氏のテキストにある「感情に導かれた情景」、この言葉が的確に彼女の作品の本質を表していると思います。是非、短い期間ですが、作品を見ていただけたらと思います。(小山登美夫)
【アーティストの言葉】
シャルロット・デュマは、自分の作品について次のように書いています。
私たちと動物との関係から人間性のあり方を理解し、そして研究することは、私の作品制作における根幹をなしています。ある特定の動物を私たちはどのような目的で飼育し、それらと共存し、そしてそれらを定義付けるのか。そして私たちはなぜそれらに個人的な思い入れを持ち、時に何らかの象徴として扱うのか。そのような観点から、被写体の選択を行います。
社会に当たり前のように存在している動物の消息は、私たちが他者への共感を抱くこと、そして日常の生活を送るということに大きな影響を及ぼすだろうと私は考えます。
私たちは一方で動物を食糧源としてみなし飼育しながら、もう一方では(視覚言語において特に顕著ながら)それらの動物を擬人化してしまうという二つの思考を持ち、その間には大きな溝が広がり、関係性における矛盾を増大しています。動物についての議論では、感情論が先行してしまう。動物との直接的な接触が減るほどに、動物が持つ本来の能力、動物が私たちにとって、私たちが動物にとって何を意味するのかということ、その深遠さについて考えることが難しくなります。
これまで十数年にわたり、私は馬や犬を中心に、狼や虎なども含むさまざまな動物を観察してきました。それらの動物たちは、特定の状況下で人間と関係を育んでいます。動物という存在に対して、ひいては私たち自身や他者に対し、どのような価値付けを行うのか。そのような複雑な問いは私を強く惹きつけます。究極的にそれは、選んだ被写体それぞれを定義しようとする私自身の問題でもあるのですから。
シャルロット・デュマ
(浅間国際フォトフェスティバルカタログ、2018年)
TOMIO KOYAMA GALLERY(小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6434-7225