1972年、ローマ近郊に住むあるイタリア人夫婦が、アパートの部屋にバスルームをひとつ増やしたいと考え、夫が自分自身で改造に取り組むことを決めた。
しかし、壁の石膏をはがしていくうちに、彼はとんでもないものを発見したのだ。
無傷のフレスコ画だった。
「最初に目にしたのは聖ペテロの剣でした。そして手と腕。」AFPの取材に彼はこう答えた。
石膏をさらにはがし、彼がそこに見つけたのは、わずかに小型化されたラファエロの壁画「ヘリオドロスの間」の複製だった。
この発見により家を失うことを恐れた夫婦であったが、イタリア文化庁に連絡し、ほどなく専門家がサンプル採取のために夫婦の部屋に派遣された。しかし、驚くことに派遣された専門家はその後再び現れることなく、この事例はイタリアの官僚主義の中に埋もれてしまった。
その後役人が追跡調査のため夫婦の家を訪れたとき、夫は「消えろ」と一言放った。
約40年もの間美術品と共に暮らした夫婦は、彼らの発見物を公共物にすることを決意。専門家によると、この複製壁画は16世紀、ルネッサンス時代の巨匠Ugo da Scarpi氏によるものである可能性が高いとのこと。
この作品を見た学者はこれを肯定するレポートをした。ブリュッセル大学美術史名誉教授であり、ラファエロに詳しいNicole Dacos氏は「ここは一種の美術館になるべきだ」と語っている。
このことに対し、夫婦は「小さな家」をもらえれば喜んで提供する、としている。
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