GALLERY MoMo Projects では3月25日(土)から4月22日(土)まで小野さおり個展「信じるカタチ/見えざるカタチ」を開催いたします。
小野さおりは1981年福島県生まれ。2006年女子美術大学大学院修了後、2010年に群馬青年ビエンナーレで大賞、シェル美術大賞展ではグランプリをダブル受賞して一躍脚光を浴び、2012年損保ジャパン美術財団選抜奨励展でも損保ジャパン美術賞を受賞、今年はVOCA展にも推薦され順調にその地歩を堅固なものにし、当ギャラリーでは5回目の個展となります。
幼少期には自然に翻弄される身近な人の生と死を体感し、近年では3.11により抗いがたい自然の力に畏怖と絶望を見ました。しかし時には自然に癒され、 自然への祈りがおのずと湧いて来ることもあり、作品にもそうした相対する自然の二面性への思いが強く反映されています。
今展では、自然のように、二面性を持つ鏡をモチーフにした作品を中心に展示致します。古代より鏡は、多くの人を魅了し、死者と共に埋葬することで、 死者の魂を守ったと言われています。また、中世ヨーロッパでも、フーゴと同時代に活躍した神学者ペトルス・ロバンドゥスが「魂は鏡であり、私たちはそれによって何らかの方法で神を知る」と記述しています。一方、日本でも鏡は日本神話をはじめ、『日本書紀』や『古事記』にも三種の神器として登場し、 神社でも神が宿る依り代の一つとして祀られ、神を自覚する役割を果たしてきました。
西洋絵画では、ルネサンスより、人物とその人が写っている鏡を描くことで、自己との対面や自己認識などを表現した作品が多く制作されてきました。 しかし、小野は、鏡に映っている対象物は画面に置かず、どこか人の気配はするものの、人そのものは描かれていません。それは、作品を鑑賞する我々の 方に、鏡に映っている物があるかのように感じさせ、作品の中に自分が引き込まれるような感覚に襲われます。同時に、鏡がフレームのようにも見え、違 う世界を、フレームを通して見ているようにも感じられます。鏡のフレームのように輪郭線を与えて色を重ていく事で、形自体に意味が生まれていくこと を意図して、小野は鏡をモチーフとして使っています。
鏡を持った人が見たいものを見ることから、鏡は、真実も偽りも映すと言われています。私たちの心の中にある目には見えない信じるカタチは、鏡によってカタチを与えられ、その瞬間に思いの矛先が明確に見えてきます。このように人が介在することで見えざるカタチの意味も変化し、新しい見え方を模索していると小野は語り、そこから自然に湧き出るものを描くことで、「質量」と「意味」が付与された作品が生まれて来ると感じています。
今展ではそうした油彩による作品13点を展示いたします。身近な風景がピンクに染まり、ささやかな希望にも胸ふくらむ季節、期待を持ってご高覧い ただければ幸いです。
【アーティストコメント】
私はカタチに釉薬を重ねるように何層もの絵の具を重ねていきます。
そうすることで不透明なものが質量を持ち始め、意味を持ち始めるように感じるからです。
色やカタチと向き合い、今、心地良いと感じるものを描いたのでゆっくりと見てもらえたら幸いです。
2017年 小野さおり
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