スカイザバスハウスは、3月3日(金)から4月22日(土)まで、宮島達男による個展『LIFE (complex system)』展を開催いたしま す。シドニー現代美術館(MCA)での一大個展がアジア内外で大きな注目を集める宮島による、弊ギャラリーでの6度目5年ぶりの個展となります。みなさまにはぜひご周知いただきたく、ご案内申し上げます。
1と9の間を行き来する発光ダイオード(LED)の明滅・・・。宮島達男は、誕生から死に至るまでの生命、そしてその他者への関係性を、数字というユニバーサルな記号の反復によって表現してきました。2012年に発表した「IKEGAMI Model」では、東京 大学で人工生命を研究する池上高志教授の協力を得て、生命体のような動きをする特殊なプログラミングと電子回路を構築しています。ひとつの電子信号が全く予測できない反応の連鎖を生み出す「IKEGAMI Model」は、周囲の環境や互いの関係性 に順応し、既存のフォーマットを超えた新しい存在として自らプログラムを書き換えていきます。そこには、絶え間ない変化に接続された生命体を、個と全体の関係性から考察する生命科学の視点が取り入れられています。
新作シリーズ《Life (Complex System)》(生命:複雑系)は、ステンレス製ケースのなかに配したIKEGAMI Modelのデジタル カウンター(ガジェット)とそれを結ぶ電子回路で構成され、あたかも人工生命が「孵化器」のなかで息づくように、LEDのまたたきに人工生命の静かな呼吸が託されています。生命の宇宙に接続したこれらのガジェットは、光の三原色によるさまざまな 個性の輝きとなって顕現し、やがて「0(ゼロ)」を刻む一瞬、闇に伏します。死を意味するこの暗闇もしばしの休息にすぎず、光はまた立ち上がりカウントをはじめる ー それは仏教における輪廻転生の教えでもあります。半永久的な反復を可能にするLEDテクノロジーは、複雑系の学説や宗教観のうちに結びつき、複雑な世界に開かれた生命の神秘を解き明かしながら、永遠につづく時間の流れを示唆しています。
昨年、宮島は香港のランドマークである超高層ビル世界貿易センター(ICC)で、490メートルに及ぶビルのファサードに数字の連なりが流れ落ちる光のインスタレーション《Time Waterfall》(2016年)を発表しました。この作品にちなみ「時間の滝」と題した新作《Time Waterfall》(2017年)では、3メートルの電光パネルの上方から下方に、大小様々の数字が不可逆的に、異なるスピードで流れ落ち、消して戻らない「今」このときにおける生命の重要性を強調しています。万物が複雑な因果関係によって成り立つとき、わずかな電子信号が予期せぬ光の広がりを見せるように、ある集合的な一致によってひとつの状況が生み出されます。それはまた、情報テクノロジーの進化とポスト真実といわれる混迷の時代において、わたしたちの知性が赴く行く末を如実に示しているのかもしれません。
それは、変化し続ける / それは、あらゆるものと関係を結ぶ / それは、永遠に続く
宮島達男
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