この度メグミオギタギャラリーでは川野美華 個展「夜行性の庭」を開催致します。川野美華は1983年大分に生まれ、別府大学文学部芸術文化学科絵画表現コースを卒業、同学科研修生を終了しました。第87、88回春陽展奨励賞、第89回春陽展春陽会賞、第93回春陽展損保ジャパン日本興亜美術財団賞、2007年別府アジアビエンナーレ絵画別府市美術館賞、2010年審査員特別賞を受賞。現在個展、グループ展で精力的に作品を発表しています。
淡い色調の中に異形の生物が動き回る川野の作品は、不気味でどこかエロティックでもあり物語の一場面のようです。西洋の神話や聖書の題材と自分の日常を組み合わせ、独自のアトリビュートを描き展開する作品は、見るものを容易に絵に惹きつけ迷宮に引き込み、まるで不思議の国のアリスの世界に入り込んだ感覚にさせます。リズミカルに描かれる細い線は、動勢がありサイ・トォンブリーを思わせる無意識の中から自然に湧き出てくる詩や音楽のようでもあります。
川野はまた肌色を、人物の皮膚や背景に多く使用しており、肌色を人物を表す重要な要素として使用しているウィレム・デ・クーニングの作品との共通点を見出す事ができます。
思い起こせば、誰でも幼い時には自然と肌色を選び、家族や友達の姿を描いた事でしょう。それゆえ肌色で描くことは稚拙で安易であるという認識がつきまといますが、子供が素直にその色を選び絵を描くという行為には、無垢ゆえに時に残酷なほど人間の奥底をあぶり出してしまう強い力が宿っています。背景に使われる肌色もまた、画面全体が人そのものであるかのようであり、その中でうごめく生物は、思いや無意識、強く印象に残ったイメージなど心の中を表しています。
川野は肌色に、絵そのものを人間として表現する為の重要な役割を与えているのです。
時に作品の画面に、つけマツゲ、真珠や針などをコラージュしたり、粘膜、虫の皮膚など人間の感触を呼び起こすモチーフを描き、鑑賞者の神経を強烈に刺激します。
藤田嗣治の乳白色のようなまっさらな肌色の余白との対比が、大書やアクションペインティングのように動きのある迫力を伝えます。
一見穏やかな色彩の中に人間の内面や感覚、エネルギーを含有する川野の絵の魅力を感じてもらうため、今展では特に肌色の背景の「夜行性の庭」シリーズと、それに関連する「聖アントニウスの誘惑」、「受胎告知」などのこの十年間の大作を中心に、新作を加え展示いたします。
初の作品集「いよいよはきい」(発行:玲風書房)も2016年10月に出版された(オリジナル作品付きの特装本を今展で販売します)、注目の大型新人 川野美華の個展「夜行性の庭」に是非ご期待ください。
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