荒井信吉は、平面をなにかの境界線や膜と捉え、一方方向からの働きかけではなく、押したり引いたり、つまり抜いたり描いたりすることで絵画として創り上げていきます。主な作品は、布地から色を抜き、合成樹脂塗料等で描いた作品で、脱色するのは予定調和になる自意識から逃れるためであり、無意識と自意識の狭間に支持体があります。
また映像作品の「one size fits all」は、25倍に拡大した麻雀牌を使い、河原で実際に麻雀をしているというもの。これは麻雀というツールを使い、人の気配や非言語的コミュニケーションは、道具が極端に拡大されることでどのように変化するのかを記録した作品です。鑑賞者が作品から接続されるイメージは、スパイラル・循環・コミュニケーションで、「行き来することで立体的に形作られるあるもの」が視覚化されています。
現代の多様化したコミュニケーションツールにより一方的な表現に陥り、忘れがちになっている気配を感じて慮るという日本人が大切にしてきたものが、荒井作品の持つ循環というイメージへの接続によりまた見え、それについての思考の場となれば幸いです。
平面、立体、映像作品、計11作品をご紹介します。
「消すと見えてくるもの」
「失うと気づくこと」
何処からとも無く到来するものに想いを馳せてみる。
返事もしてみる。
膜のような画面に生まれた空隙には、応答の跡が残されています。
荒井信吉
〒336-0922 埼玉県さいたま市緑区大牧1470-10
http://gallerypepin.wixsite.com/gallerypepin/