渡辺豪(1975年兵庫県生まれ)は、人の顔や身の回りの食器や本、部屋などの身近なモチーフを3DCGを用いてモデリングし、その表面に実際の写真を貼り付けたプリントやアニメーションを制作しています。展示タイトルに用いられている「境面」とは境 (border) と面 (face) を合わせた作家による造語であり、存在する表面と物質の不在とが合わさったどちらにも属さない領域を表します。2007年の「境面」、2011年の「lightedge - 境面 II -」に続き(いずれもARATANIURANO)、3回目となる今回は時間や素材、場所によって移ろい行く光に焦点を当てています。
近年の主な活動として、「コズミック・トラベラーズ - 未知への旅」(2012年、エスパスルイ・ヴィトン東京)、「カルペ・ディエム 花として今日を生きる」(2012年、豊田市美術館)、「あいちトリエンナーレ 2013」(2013年) にてそれぞれ新作アニメーションを発表し、2013年に第24回五島記念文化賞美術部門新人賞を受賞後、約1 年間フィンランドでの海外研修を経験しました。その後、The APB Foundation Signature Art Prize 2014 のファイナリストに選出されシンガポール美術館にて作品が展示され、スイスとポーランド、ドイツを巡回した国際交流基金によるグループ展「ロジカル・エモーション - 日本現代美術」へ参加するなど、国内外を問わない活躍をみせています。
今回の個展では2016年に愛知県立芸術大学構内で行われたグループ展「芸術は森からはじまる」において発表した映像インスタレーション「本と床と22個の光 ( 愛知県立芸術大学図書館棟書庫)」を中心に、アニメーションとプリントの新作約10点を展示いたします。
現代社会の情報化はとどまるところを知らず、必要な情報ですら目にした次の瞬間に過ぎ去って行きます。その速度は時として人類の思考を曇らせ、生命をも脅かすと言っても過言ではありません。渡辺の作品の持つ「境面」への回帰と緩やかな運動には、私たちをもう一度思考の瀬に立たせ、自らが何を見ているのかを認識させようとする、静かなエネルギーを見ることができるでしょう。
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