アニッシュ・カプーア (1954年〜)はインド、ムンバイ生まれ。現在はロンドン在住で英国を代表する現代美術作家の一人として活躍し、世界各国において展覧会を開催、パブリックアートも数多く制作しています。
近年では2012年ロンドンオリンピックの際に記念モニュメントを設計、2015年にはヴェルサイユ宮殿で個展を開催するなど、常に国際的な注目を集めています。
日本での活動には、金沢21世紀美術館の恒久設置作品や、2013年から始まった東日本大震災の被災地の応援プロジェクト「アーク・ノヴァ」のバルーン製仮設コンサートホールのデザイン他、多数が挙げられます。
カプーアの作品には、ステンレス、大理石、ワックスやコンクリートなど実に様々な素材が使用されています。どの作品にも一貫してカプーア独特の空間が提示され、浅いくぼみが深淵に見えたり、表面上に全く予想もしない風景が映り込んだりと、既存の概念が覆されるような世界を体感することになります。
また、その身体的な体験は官能や畏敬といった原初的な感覚をも呼び起こし、鑑賞に哲学的な余韻をもたらすのです。
本展に出品される作品はシルバーや黒などモノトーンでまとめられ、視覚的に強く迫ってくるというよりは、作品の「気配」が立ち昇ってくる構成になっており、いわばカプーア作品の本質的な部分が抜き出されたかのような展示になっています。
メインとなる彫刻類は、果てしなく闇が広がるボイドや、角度によって複雑な映り込みを見せる球体など、空間の無限の広がりやねじれが感じられ、天体観測的に展覧会を鑑賞できます。
平面作品も展示され、空気や磁場を視覚化したかのような抽象的なイメージが、細長い形状の和紙に描かれ、彫刻作品との共鳴が楽しめます。
その他、20分の1のスケールで制作された建築模型、Void Pavilionsシリーズがインスタレーションされます。これらの模型は特定のプロジェクトではなく、アーティストの作品構想のスケッチのような存在でいわば空想上の建築・作品です。模型で全体を俯瞰して見ると建物の空間すべてが計算され尽くされていることが分かり、カプーアの制作過程を垣間見るかのようで非常に興味深く感じられます。
インターナショナルに活躍中のアニッシュ・カプーアの5年ぶりの日本での個展となります。是非ご高覧下さいますようご案内申し上げます。
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