ショナ・トレスコットは1982年オーストラリア生まれ。シドニーの国立芸術学校絵画専攻卒業。現在はニューヨークにて制作活動を行っています。
ショナ・トレスコットの新作には、人間と環境の関係に対する変わらぬ関心と偏愛をみとめることができます。そのまなざしは、人類が地球の生態系や気候に大きな影響を及ぼすようになった「人新世」と呼ばれる地質年代へと向けられています。人と自然界との関係がかつてなく不穏なものとなったこの時代にあって、本展はある親しみに満ちた空間を作り上げています。彼女が描く穏やかな、陰気な、あるいは荒々しい空のもとにある風景が示すのは、私たち全員を結びつけるもの、すなわち「大気圏」なのです。鑑賞者は足を止め、次のように考えるかもしれません。私たち人間が生み出しつつあるこの移り変わりの中で、私たちの種としての役割とは何だろうか、と。
本シリーズは、歴史上の風景画というジャンルとともに、神話、現代の環境問題を扱う報告書・報道記事・科学、さらには自然界に対する作家の個人的なつながりに着想を得ており、風景というものを、たんに地理的な場所としてではなく、私たちの存在を成り立たせているアイデンティティを吹き込まれた空想上の場と捉えています。ターナー、コンスタブル、モネといった偉大な風景画家たちを参照しながら、「いまだかつてない何か」を引き出そうとする自身の関心を探求し続けているのです。幅広い色彩と濃淡をともなったストロークで、研磨された金のアルミ合金に直接描かれたこれらの小さな絵画は、時間の中に存在する「ある特別な瞬間」を示しています。次第に消えてゆく何か、どこかから取り出され、運び去られる何か、誤った場所に置かれ、見逃され、あるいは失われる何か。ショナ・トレスコットは、いま起こりつつある記念碑的な変化の目撃者となることを私たちに求めているのです。
4年ぶりの発表となる本展では、新作絵画40余点を展示いたします。どうぞご高覧ください。
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