タカ・イシイギャラリーは、7月30日(土)から9月3日(土)まで、竹村京の個展「なんか空から降ってくるよ」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの4年ぶりの個展となる本展では、初めての試みとなる写真の印画紙を用いた作品を含む最新作から、およそ20点の作品を展示いたします。
いつだったか、高速でトラックが横転したせいで積荷のおびただしい数のカズノコが空から降ってくるというニュースがあったのを突然思い出しました。空から降ってくるものは全てありがたいものだと思っていましたが、2011年の3月11日、あの真っ青な空が汚れて見えた瞬間、自分の目を疑うようになりました。2012年12月の上海で、目の前にある建物が真っ白いガスに覆われて何も見えなかったとき、これが世界の塗り替えの始まりだと思いました。ダナエは金貨が欲しかったのでしょうか。私たちにはこれから何が降ってくるのでしょう。
竹村京
竹村は、2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに続く原子力発電所の事故を目の当たりにし、青いと思っていた空や、色がないものと感じていた空気など、自身を取り巻く環境が一変したように感じたと言います。その感覚は、歴史や文化が自明で確固たる道を歩んできたのでは決してなく、その時々の人々の記憶や知覚を通じて自由に書き直され、伝播されてきたものの連続であるという真理にも通じ、本展にて発表される作品群の着想へと至りました。
例えば、最新作のひとつ「Danae」は、ギリシャ神話に登場する王女ダナエを描いたティツィアーノ・ヴェチェッリオの絵画への参照が含まれます。横たわるダナエの上空から金貨が降り注ぐ様子が描かれている絵画の構図を下敷きにしつつ、竹村自身の日々の記憶から取り出されたものごとによって描かれた本作では、画面の中央に位置するカメオが原画を暗示する役割を果たしています。竹村自身も手元にいくつも持っているカメオは、貝殻等に女性の肖像が彫られた装飾品ですが、貝殻は歴史上通貨として用いられたこともありました。原画に描かれた金貨にどのような装飾が施されているのか―そのように想像してみると、ダナエに降り注ぐ金貨も新たな意味を与えられるようです。
同様に、本展にて発表される作品は、竹村が日常のなかで出会った一コマをベースにしながらも、それらが竹村の感覚を通じて新たな姿を与えられ、ありえたかもしれない現実を表象しています。姿や役割を変えながら世界のなかで存在し続けていくものたちへの、繊細な眼差しを通じて作り出される竹村京の最新作をこの機会に是非ご高覧ください。
151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-10-11 B1
Tel:03-6434-7010