神谷徹のグラデーションの色彩だけで表現される極めてシンプルな絵画は、描くということを 突き詰めた形態であるといえます。 なぜ描くのかという理由付けや、描かれたものの意味も重要なことであるかもしれませんが、 同時に制作する者や鑑賞者も型にしばりつけることにもなります。より自由に、けれども同時 に本質に迫るような絵画とは何かを追求すると、色彩のみの視覚だけの世界に到達するのかも しれません。 壮大なテーマやコンセプトなどを敢えてそぎ落とし、特別な意味合いが極力出ないように制作 される神谷の作品は、何も持たないゆえに非常にオープンな状態で人々を受け入れます。ゆえ に鑑賞者は純粋に絵画を見るという喜びを得ることができるのです。
本展では銭湯である天井の高いギャラリー空間を生かし、おおよそ 5×3m におよぶ大型の絵画 作品を中心に構成されます。 マットな表面処理をされたペインティングは、画面の中に取り込まれてしまいそうな深みがあ り、それぞれの持つ色彩が楽しめます。また、会場全体をインスタレーションとして見立てる と、個々の作品が重層的になって調和し、まるで一つの楽曲を醸し出しているようにも見える でしょう。
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