「"ポップ"カルチャーを俯瞰してみることは、今までの偉大なる芸術作品や詩、哲学、または政治などからアプローチするよりも、現代の世界に関してより巧みに説明することができるのではないか」
と語るアレクサンドル・モベールは、MORI YU GALLERYにて今までに2度の展覧会を開催してきました。本展覧会"Standard supply"でも様々なメディアを駆使していますが、なかでもコラージュが重要な手法となっています。後期キュビスムにおいてピカソやブラックによってその名を与えられたコラージュ。それこそが今という時代における指針となり、メタファーとして機能し、論争の可能性を開くとアレクサンドル・モベールは語ります。かんがみるに、まさに現代においては、インターネット上に溢れる多様なる情報がレイヤーのように我々の視覚へと襲いかかってきているとも感じられます。こうした状態は、現実と非現実が綯い交ぜになったコラージュ状態にあると見ることができるかもしれません。
例えば彼はインスタグラムを取り上げて語ります。インスタグラムは、個人的に撮影した写真を時には文章を添えてアップし、それを他者が共有し、ときには反応します。彼はこうしたインスタグラムがとても興味深いと語ります。綺麗な写真と格好いいフレーズやロマンティックな文章がひっきりなしにアップされ、時には他人の言葉も借りつつ更新されるインスタグラムは、まさに現代のコラージュ的手法の一つであると彼は指摘します。まるで自分の気持ちや感覚を他者が理解してくれているかのような錯覚におちいる利用者も多いのではないでしょうか。否、そんなことはどうでもよく、ただ発信したいという欲望が全てなのかもしれません。
彼は、こうしたインスタグラムの手法を模したり、その他様々なコラージュの手法を駆使し、現代の日本のポップ・カルチャーの像をとらえ作品化することで、テレビやインターネットに溢れる情報の氾濫の中に見え隠れする現代人における心象と外部の他者との関係を批判とともに滑稽なかたちで見事に露見させています。
新作平面20数点と新作映像作品を展覧いたします。どうぞご高覧ください。
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