タグチファインアートでは上記の期間約4週間、ベアーテ・ミュラーの写真作品の展示をおこないます。
ベアーテ・ミュラーは1965年ドイツ、ケルン近郊のベルギッシュ・グラッドバッハ生まれ。1984年からアーヘン専門大学で、その後1989年から1994年までデュッセルドルフ美術大学でグラフィックを学び、フランツ・エッゲンシュウィラーからマイスター・シューラーリン資格を取得しました。以来、アーヘンとケルンを拠点にグラフィックデザイナーとして活動してきましたが、2013年には初めての写真集をケーラー社から出版、現在は写真作品やコラージュ作品の制作へ仕事の比重を移しています。
彼女が被写体として選んでいる対象の多くは、さしたる特徴もない日常的でありふれた事物や風景、例えば街路や生け垣、公園や庭、自動車や列車、家の窓、それらに反射して映りこみ、天候や光の変化によって刻々と移り変わって行く風景など、人気のない静かで地味な風景です。彼女は、撮影地点や撮影する季節、時間帯などに周到な検討と準備をしたうえでそうした対象を撮影するのではなく、偶然出会った瞬間をスナップショットとして切り取っています。
多くの現代の写真作家が試みているような表現、すなわちエキゾチックな風俗やセンセーショナルな出来事のドキュメンテーション、そうした事件が起きた特別な場所やそれに関連する事物を提示することによって物語を喚起しようとすること、また特定の素材や題材を選んで、それらを並列させて類型化したりすることが彼女の関心事ではありません。デジタルカメラを活用していますが、特殊な撮影方法を採用したり、撮影後に画像を合成、加工したりすることで、独自の表現を試みようとしているわけでもありません。プリントや額装の仕方、展示方法も含めて極めてオーソドックスな手法を用いています。
コラージュ作品も制作していることからわかるように、彼女にとって写真は、絵画が画家にとってそうであるような、自らが探求したい世界を表現するための手段にしか過ぎません。彼女は自らのヴィジョンやリアリティーが出現する機会に備えて常に準備し、平穏で平凡な日常世界を見渡します。ある時ある場所で、様々な素材の質感や、それらの構造や構成、色彩や光のコンビネーションのなかにそれは実現し、彼女はその瞬間を確実に捉えます。
昨年9月の代官山フォトフェアでも彼女の作品は大変好評でした。本展はタグチファインアートでは4回目の個展となります。ぜひご高覧下さい。
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