ユカ・ツルノ・ギャラリーでは、1985年生まれの油彩作家、炭田紗季の個展『芥を択ばず』を、2016年2月13日(土)~3月5日(土)まで開催いたします。
炭田はこれまで、富士山や七福神などいわゆる伝統的で日本らしいモチーフとそうでないものを組み合わせた風景を描いてきています。それら両者が存在する風景は現在の日本では日常の一部であるにも関わらず、記念写真や観光地の宣材、神話的物語の一場面などさまざまなイメージとして絵画上に再構築された風景は依然として異質な組み合わせでありどこかシニカルでもあります。
今回、ユカ・ツルノ・ギャラリーでの初個展となる本展覧会では新作を含め、炭田の代表作である富士山と七福神のシリーズを展示します。タイトル『芥を択ばず』(あくたをえらばず)は「大海は芥を択ばず」ということわざからきており、「大人物は小さなことを気にせず何事も寛大に受入れる」の例えです。炭田は日本の状況を、他から流れ着きさまざまな形で日本に定着してきた伝統や信仰、文化が複雑に絡み合った環境として認識しています。「芥を択ばず」はそのような積極的に異文化を受け入れ発展させてきた環境を肯定的に捉えたものであり、80年代に生まれた作家自身が眺める日本の風景であり彼女の姿勢そのものでもあります。古来より異文化との交流の中にありながら、いつしか「日本のオリジナル」として定着したイメージを、あえて対比的に複数の文化が混ざり合った様子として、キャンバスに油彩という西欧の伝統的絵画上で再現する試みは、自分たちの生きている場所を知る方法でもあるのです。
作家プロフィール
1985年岡山県生まれ、2010年市立尾道大学大学院美術研究科修了。現在京都府在住。主な個展に「Fuji」(2015年 トーキョーワンダーサイト渋谷、東京)、グループ展に「ワンダーウォール 2013」(2013年 東京都現代美術館、東京)「VOCA 2014」(2014年 上野の森美術館、東京)「今日を過ごす方法」(2014年 高松市塩江美術館)I氏賞選考作品展(2016年 天神山文化プラザ、岡山)など。2016年4月より吹上美術館(倉敷市)にて個展が開催予定。
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