2016年1月23日(土)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、山本渉 個展「しみ そめ しわ」を開催いたします。
山本渉は、これまで写真を媒体に多岐に渡る作品展開をしてきました。
熊野古道の原生林の中で、旧道の道なき道をたどりながらセルフポートレートを撮影した「線を引く」、一見美しい彫刻のように見えるが、実は男性用の自慰道具の内部に石膏を流し込み型取りした立体物を撮影した「欲望の形」、 降り注ぐ太陽の暖かさをピンホール技術を用いて視覚情報化した「春/啓蟄」など、自己の体験を通じ、様々なアプローチでそれぞれ異なる表現の作品を発表してきました。
しかしながらその本質は一貫して、多様に変化する人間の精神的なイメージとしての自然を記録しようとする試みです。
新作は支持体を印画紙から布に変え、日光写真の技法を用いたものです。
制作のきっかけは、2011年の原発事故後に福島第一原発から約280km離れた神奈川県にある山本の自宅に面した公園で強い放射線量が計測されたというニュースでした。陽当たりがよく心地よい風の吹く公園から、ある日子供が消えるーそれまでそこにありながら意識されなかったものを形として残すために、山本は人の影そのものではなく、着用した時の服のしわを痕跡として残すことを考えました。
まず始めたのは衣類に感光液をしみこませ、日光にさらすことで着用者の影を捉えることでした。そして、個々のしぐさやくせがそれぞれの体型に応じた影を作り、服の内側から滲んだ汗が像となるのを見るうちに、太陽によって成立する、支持体としての布と記録媒体である感光液との関係にも注目するようになります。
身体の影や汗が密着露光された衣服上には、身近にありながらそれまで意識して感じることのなかった、未知のリアリティが現れます。それこそが、山本のいうところの"視覚情報化"された自然の形象なのでしょう。
また「日の丸」を想起させる丸いしみの中にみえる山脈の鳥瞰図のようなしわの像は、大地の亀裂とも読み取ることができます。これは、昨今の社会状況に対する山本からの皮肉なメッセージにも受け取れるかもしれません。
今回の個展に合わせ、石川卓磨氏(美術家/美術評論)をゲストに迎え、トークイベントを開催致します。
この機会に是非ともご高覧ください。
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