川端健太郎の、磁土の手捻りによる独特な造形のオブジェは、深海の生物のような神秘的な生命感を帯びています。岐阜県瑞浪市の自然豊かな環境に工房を構える川端にインスピレーションを与えるのは、愛猫が口にくわえてきた虫や、多くの人は見逃してしまうような、かすかな、あるいは当たり前の季節の変化などです。春に芽吹き、夏に茂り、秋に実り、冬に枯れる。その生命の振幅をドラマチックに膨らませ、繊細な指先で紡ぐように生み出されるかたちに、混ぜ込んだガラス片や、硫化させた銀が与える多彩な釉調は、艶やかな色気を放ちます。
本展覧会では、オブジェシリーズ「Soos」を中心に、鉢や茶碗、皿などを展示します。「Soos」のSoはソウ、つまり「草」をあらわし、そこに鏡合わせのように加えられたosは「operation system」の意味。全体で、芽吹き枯れる、という植物が毎年繰り返すサイクルと、そうして堆積していく濃密な時間を表現しています。展覧会タイトル「Organ」は、何気なく生まれた作品が、作品群となり、ひとつのシリーズ、ひとつの「Organ(器官)」として成立し、なにかを語りはじめ機能する。そんな感覚からつけられました。川端の無垢そのものの目を通して築かれた作品世界は、新鮮な輝きに満ち、時に妖艶に私たちを魅了します。
川端健太郎は1976年埼玉県生まれ。2000年に多治見市陶磁器意匠研究所を卒業すると、益子陶芸展加守田章二賞(04年)やパラミタ陶芸展大賞(07年)など、早くから陶芸の各賞を受賞しました。陶芸の老舗で数々の個展を行う一方で、唯一無二の感性と造形力は現代陶芸としての評価が高く、国立近代美術館工芸館(「現代工芸への視点―装飾の力」09年)や茨城県陶芸美術館(「現代陶芸現象展」14年)、岐阜県現代陶芸美術館(04年、10年)などの展覧会に参加しています。
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