ミヅマアートギャラリーでは、10月14日(水)より米谷健+ジュリアによる個展「Wishes」を開催いたします。
2009年に米谷健がオーストラリア代表の一人として参加したベネチアビエンナーレを機にユニット活動を始めた二人は、身近な環境や政治的な問題を美的かつユーモア溢れる作品に変換し、海外を中心に活動してきました。今年は、フランスの修道院での個展をはじめ、ドイツやカナダ、イギリスでのグループ展、そして年末にはオーストラリア国立美術館での個展の開催も予定されており、世界を舞台に更なる活躍が期待されています。本展は、米谷健+ジュリアの日本における初個展となります。
今回、彼らは「原子力」をテーマにした作品群を展示いたします。
メインとなる、複数のシャンデリアによるインスタレーション《クリスタルパレス: 万原子力発電国産業製作品大博覧会》は、その1点1点に原発保有国の国名がつけられ、保有する規模がシャンデリアのサイズで表現されています。現在はほとんど製造されていないウランガラスを用いて制作され、ブラックライトの照射によってウラン特有の幻想的な緑色の光を発します。
オルゴールから奏でられる「小さな世界」のメロディーに合わせ、ディズニーキャラクターのティンカーベルが光に包まれながら回転する作品《3つの願い》は、その外見の愛らしさの一方で原子力の脅威を孕んでいます。本作品は、1957年に制作されたディズニーの映像作品「わが友 原子力(原題:Our Friend the Atom)」から着想を得て制作されました。作品に近づいてみると、ティンカーベルの羽は、福島第一原子力発電所事故によって放射能汚染の影響を受けた小蝶(ヤマトシジミ)の羽であることに気づかされます(※1)。
ディズニーが未来を担う子どもたちに向けて「わが友 原子力」を作ったように、当時高度経済成長期にあった日本においても、原子力は私たちの生活を豊かにする、国の成長の証のように教えられてきました。一方で、原子力発電を利用した産業政策と経済発展が、環境破壊や人々の安全性を揺るがしてきた事実も、私たちは福島の原発事故で実体験として学んできました。
「我々は未来に何を願うべきなのか」
彼らの作品は未来に踏み出そうとする私たちに問いかけています。
ぜひ多くの方にご高覧いただき、新たな才能に触れていただけましたら幸いです。
(※1) 福島県広野町で採取されたヤマトシジミの卵を沖縄のスタジオで飼育し、成虫となった蝶を使用している。放射能汚染の生物学的影響について調査を行う琉球大学大瀧研究室の協力を得ています。
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