山本桂輔は彫刻と絵画の2つの表現方法を横断しながら、制作を行ってきました。
2000年代までの作品では、草花やキノコ、妖精のようなモチーフが、有機的な曲線に巻き取られながら、独特の色彩の中にひとつのフォルムとして完結します。 その幻想の世界感が極限まで肥大化したのが、2009年の個展「起立」で展示した高さ5mを超える巨大な彫刻でした。作品は生命力すら感じる圧倒的なボリュームと、派手な色彩で人々を魅了しました。以降山本の彫刻は少しずつ変わりはじめます。
2012年、山本は拾った古道具などに部材を加えたり、彫刻を施した作品を、個展「Brown Sculptures」で発表しました。それまで色に対する憧れ、絵画への憧れが強かった彼が、この展示では、比較的小さな木彫だけを展示し、しかも木工用の茶系の着色剤を使って、色を廃しました。かつて別の用途で使われていた道具をなにかに見立てる、あるいは擬人化することは、日本人にとって馴染み深く、ある種のフォークな感覚は山本の新たな展開を感じさせます。作家は自身の作品について、「人間の創作の歴史や衝動に興味があります。それらを意識しながら、彫刻と絵画は相互に関係を持ち、生成されていきます。」と語っています。
彼の制作を語る上で、彫刻との両輪として欠かすことのできない絵画。松井みどり氏は、山本の絵画について「幾何学形と植物のイメージを組み合わせることで、装飾的なデザインと象徴的な連想を統合する」と評しています。本展覧会では、古道具を用いた木彫のシリーズなどの彫刻と絵画を、あわせて展示いたします。
山本桂輔は1979年、東京生まれ。2001年に東京造形大学彫刻科を卒業後、同大学研究生として2003年まで在籍。現在、神奈川を拠点に制作活動を行っています。小山登美夫ギャラリーでは、2005年から個展を行い、今回が6度目となります。出展した主なグループ展に、「VOCA展 2008」(上野の森美術館、08年)、松井みどりキュレーションによる「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」(原美術館、09年、以降世界巡回)、「Twist and Shout: Contemporary Art from Japan」(バンコク芸術文化センター、09年)、「ノスタルジー&ファンタジー 現代美術の想像力とその源泉」 (国立国際美術館、14年)などがあります。作品は国立国際美術館などに収蔵されています。
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