GALLERY MoMo Ryogoku では9 月26 日から10 月24 日まで小野さおり個展「smiling forest 《スマイリングフォレスト》」を開催いたします。
小野さおりは1981 年福島県生まれ。2006 年女子美術大学大学院修了後、2010 年に群馬青年ビエンナーレで大賞、シェル美術大賞展ではグランプリをダブル受賞して一躍脚光を浴び、2012 年損保ジャパン美術財団選抜奨励展でも損保ジャパン美術賞を受賞、順調にその地歩を堅固なものにし、当ギャラリーでは4 回目の個展となります。
近作では視線の変化が見られ、衣服や布地、花瓶に活けられた植物など身近なモチーフへ広がりを持たせています。そうした日常生活の一部として取り込まれた植物や貝殻も、自然を侵食し共存できなくなった無意識の原点回帰と感知し、しかしそうした中にも自然に対する畏怖の念と祈りの姿勢は保持され、個々の作品に通低するテーマとして展開されています。
そのことは実家が漁業を生業とする幼少期の体験と切り離すことはできず、冬の嵐の中漁に出た船が転覆し祖父は帰らぬ人となり、父は紙一重で生還するという体験の中で、自然への畏怖と生還への祈りは切迫した体験として深く心に記憶され、先の震災はその思いに拍車をかけたに違いありません。
今回の個展のタイトル「smilingforest 《スマイリングフォレスト》」は、作品と共に前向きな姿勢の表れのようでもあり、深い哀しみからの脱却とも感じられ、現状からの飛躍を予感させます。今回、小野はキャンバスとパネルの間にクッション綿を挟み、丸みを出すことで、角張ったキャンバスの人工的な印象を和らげ、自然の中に存在する物の優しい印象を与えました。
形を変えて身近に置かれた自然の中に、過去の自然との共生の記憶をたどっています。その「自然に癒され、畏怖し、祈りを捧げる」という行為が無意識の中で行われ、それは信仰に近い形で浮上し立ち返るという思いを受けたそれぞれの作品について、期待を持ってご高覧いただければさいわいです。
アーティストコメント
緑の中を歩いている時、見たこともない虫がふと道案内役をかってでてくれることがあります。きっと部屋の中で出会っていたら、部外者として追い出すことに躍起になってしまうでしょう。
こんな時、私は居心地の良さと引き換えに、たくさんのものをはいじょして、見えない垣根を作っているのかもしれないなと思います。
自由のために不自由になっていて、そんな矛盾を甘んじて受け入れているようなデタラメ感。
しかし、そんな私に対しても自然は物言わず、もしかしてクスクスと笑われているかしれないけれど窓辺で揺れている。そんな感じが好きなのです。
2015年 小野さおり
〒130-0014 東京都墨田区亀沢1-7-15
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TEL:03-3621-6813
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