この度メグミオギタギャラリーでは、約4年ぶりとなる根本寛子新作個展を開催致します。根本寛子(b.1981)は武蔵野美術大学、東京藝術大学美術学部絵画科を経て、2008年に東京藝術大学大学院美術研究科で修士課程を修了しました。
根本は「目の前の現実」と、「それとは別に存在する世界」を交錯させた情景を表現してきました。白亜地の技法を用いた精緻な-筆致で、実際の現実とは隣り合わせではない世界を描く根本の絵画は、時間と空間の概念、人間にとってのリアリティを根底から激しく揺さぶります。
2011年にメグミオギタギャラリーで開催された個展の後、根本は一度「描きたい」という欲求を抑え込み、自身の作家性と深く向き合うために、以前より関心のあったという絵本の世界に自らを浸します。
絵本特有の前後の文脈の存在、一枚では完結されない世界観は、作家に画面上での描写や質感といった表面的なクオリティーだけではない、内容の深い描写を強く迫りました。
背景に物語を持たせる ー その場の雰囲気、温度、香り、音、時刻、登場人物の感情や思い、内面的な事柄を添えた上でモチーフに命を吹き込むことによって、根本はより深い臨場感と奥行きを獲得することに挑み、奏功します。
スマートフォンやテレビ画面から大量に流れ出るイメージを受動的に受容することに慣れきってしまった私たちは、それらの像の背景に隠されている意図に無防備に自らを晒し続けています。
根本の絵画は、背後に隠れているものへの想像力を働かせ、内側のイメージを喚起する力こそが、唯一人間に与えられた創造性の根幹であることを示唆しています。
「絵を描き、見てもらう事は片道切符を渡すようなものだと思います。鑑賞者に自分の描いた世界を旅してもらう。帰って来るか来ないかは、その人次第。絵画の世界をヒントに、思わぬ記憶の旅へ出かけることもあるかもしれません。往復ではなく、片道の切符。」
文字と共にストーリーを伝える絵本以上に、根本の絵画は豊かな表情で私たちに物語を伝えてくれます。今展では、最新の油彩を約7点、水彩を約4点出品予定です。
終わりなき迷路のような旅の途中で、私たちは他でもない我々人間の想像力こそが創造の源であると体感することになるでしょう。
作家として更なる真価を発揮した、根本寛子の"One way ticket"、是非ご期待下さい。
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