タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、6月27日(土)から8月8日(土)まで、奈良原一高個展「静止した時間」を開催いたします。本展では、自らの表現手法を「パーソナル・ドキュメント」と位置づけ、独自の巨視的な視点で日本写真史における新時代を切り開いた奈良原が、1962年から3年間ヨーロッパに滞在し撮影した作品群から編んだ処女写真集『ヨーロッパ・静止した時間』(1967年)に収録されている作品約15点を展示いたします。
1962年8月、奈良原はモード誌の依頼をきっかけに当初3ヶ月の予定でパリに向かいます。天啓にも似た導きで1956年に個展「人間の土地」で鮮烈なデビューを果たし、図らずも「写真家」となって以来、多忙な日々を送っていた奈良原にとって、ヨーロッパはこれまでの環境を離れもうひとつの世界を覗きたいという私的な想いを叶え、自らの思索に時間を費やす場となりました。
極めて人工的に完結した世界と歴史の堆積を映した建造物、そこで営まれる生活......日本の感性とは異なる様式で形作られた空間に身をおき、ひとつの存在としての死とそこにある時間を強く意識しながら、奈良原は当初半年近くただ各国を見て廻ることに終始しました。やがてヨーロッパでの生活が自身の内部でのヨーロッパ像と同化するにつれ、その眼と関心は内から外に向かいます。愛車サンビーム・アルバインで4万7千キロを駆け抜け、ヨーロッパを縁取るかのように私的なヨーロッパとの出会いの瞬間を写真に収めました。その成果はまず1964年『アサヒカメラ』に「ヨーロッパ64年」と題して掲載、『カメラ毎日』に「静止した時間」として発表されました。その後、詩集を編むように編集された作品群は、1967年に『ヨーロッパ・静止した時間』として刊行され、写真集は日本写真批評家協会作家賞、芸術選奨文部大臣賞、毎日芸術賞を受賞しました。
「ヨーロッパについての私語」と自ら評したこの処女写真集の制作は、奈良原に「あらためて手のなかの空を覗く」心持を与え、その作品世界において重要な位置を占める一方、「静止した時間」のみで構成された写真展はこれまで1975年に写大ギャラリーで開催された個展を数えるのみです。今回の展覧会を通じて、写真家・奈良原一高の軌跡の一端を是非ご高覧下さい。
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