「たまたま金属で出来ている命」。
満田の作品についてはそんな言葉でいつも話をはじめているのだが、
今回は少々隙を突かれた。
ラディウムでの個展の際にはいつもメインとなる「命」をテーマにした作品を発表している満田晴穂。
今回それは「陰陽」の姿をした鶉(うずら)の骨である。
確かに命を支えるものではあるが、これまでとは明らかに違うベーシックテーマが底辺に流れているという印象が強くある。
それはより観念的であり、より象徴的なものではあるまいか。
リアリティの追求があるポイントを超え、概念化、あるいは抽象化に至るのは、
その製作姿勢といったものが深い精神性を持つからに他ならない。
単なる「ものづくりの喜び」からはそうした進化、深化、変化を作り出す事はできないと考える。
満田はそのデビュー当初からその事に気付いており、
毎回の個展、あるいは「巧術」における発表において、
彼のバックボーンであるところの自在置物から丁寧な逸脱をしてきた。
「鳳・凰」はそうした満田の意志の現在に於ける集大成的発露であろう。
言説と作品の濃密な連結、と同時に一見で見る者を納得、圧倒させるスタイルとクオリティ。
contemporary artの定義に対する日本からの緻密な回答を満田は送り出し続けているのである。
レントゲンヴェルケ 池内務
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