この度メグミオギタギャラリーでは、約一年ぶりとなる伏黒歩の新作個展を開催します。
伏黒歩(1977年生)は2003年に多摩美術大学絵画学科版画専攻を卒業し、その後は油彩を中心に発表を重ねてきました。鳥や花、木の根といった対象のシルエットを単色の色面を重ねて描く、夜の暗闇に浮かび上がる影絵のような作風で知られています。
2013年より伏黒は、彼の思う鳥の造形に顕されるような、余計なものを削ぎ落とし続けた先に残る姿形の純粋性を、陶を用いた作品を通してより直接的に表現してきました。
土と絵具を等しく表現に取り入れた伏黒の作品は単なる立体彫刻ではなく、絵の中から中心となるモチーフ以外の背景を取り除き、絵画表現の先を追求することによって生み出された、形と色の塊なのです。
手の温もりを感じる素朴な佇まいに親しみを感じながらも、人や鳥や植物が並列的に入り混じる伏黒の世界を目の当たりにした時、私たちは生理現象にも似た不安をも覚えずにはいられません。鳥も人間も時にほくそ笑んでいるようであったり、時に上の空であったりと、思い思いに物思いに耽っています。その表情は、高度に組織化された現代社会の中に生きる私たちが自分以外の誰かに向ける外面を一枚一枚削ぎ落としていったその先にある真に孤独で孤高な存在としての人間の本質を映し出しています。
今展では、伏黒陶器のアイコンともいえる高さ約60cmの作家初となる全身の立体像を中心に、新作陶作品を約20点、モノトーンを中心とした水彩画4点、ドローイング3点、油彩を3点発表します。
他に類を見ないシュールな魅力が凝縮された伏黒作品は危ないとわかっていながらも迷い込まずにはいられない圧倒的な吸引力で、観る者をも彼の世界の一部として取り込んでしまうことでしょう。
伏黒歩が二次元の絵画を追求した結果生まれた三次元の立体画に是非ご期待下さい。
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