現代において最も重要なアーティストのひとりであるリチャード・タトルは、1960年半ばから 現在に至るまで、半世紀にわたるその長いキャリアにおいて、彫刻、ペインティング、ドローイング、コラージュ、インスタレーション、そして詩や出版物など、分類すら飛び越えた作品群を発表し続けてきました。その作品に共通しているのは、何にも規定されない自律性と独立性です。作品自体のもつライン、フォルム、質感、色、ボリュームが構築するのは 、 既存の表象・認識システムの外にある、いきいきとして詩的な視覚言語であり、その空間的な展開による豊かな知覚的効果です。使われているのはきわめてありふれた、あるいは壊れやすい紙や木片、ワイヤーや金属片などの素材ですが、それが直截でありはかなげであればあるほど、作品はより驚きに満ちあふれるようです。 抽象表現主義の著名アーティストたちを輩出し、当時最も重要なギャラリーであったニューヨークの Betty Parsons Gallery でタトルは 1965年に初個展を開催。以降も壁に張ったワイヤーとその影、ドローイングの線で構成される「Wire Pieces」など、現代美術の歴史に残る作品を発表し、ポスト・ミニマリスト世代を代表するアーティストとして、次世代に大きな影響を与えてきました。
リチャード・タトルは 2014年秋から「I Don't Know. The Weave of Textile Language」と題された重要な展覧会を、ロンドンで開催しています。テート・モダンのTurbine Hallでは、彼がデザインしインドで制作した布を使用した、巨大なコミッションの彫刻作品を 2015年4月6日まで、Whitechapel Gallery では1967年から2014年まで約50年にわたる仕事の中から、テキスタイルにフォーカスした展覧会を 2014年12月14日まで開催。70年代にニューヨークの批評家に衝撃を与えた3インチのロープを壁に打ち付けた作品「Rope Piece」や、上述の「Wire Pieces」から、新作までを概観する内容です。本展ではこの Whitechapel Gallery に展示されている版画シリーズ「Type」を中心とした作品を展示いたします。タトルは版画の道具、素材、行為、コラボレーションに深い関心をもち、その長いキャリアで多数の版画作品を発表してきました。その一部を紹介する本展を是非ご高覧下さい。
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