蔵の写真は、写真家の「こう撮りたい」という意識や、写される側が「こう見られたい」と抱く願望をするりと通り抜けます。人々が日常の緊張から解放された一瞬を捕まえ、個人を超えて引き出された存在そのものが記録されていきます。それはいわゆる「日常」や「身近」という私たちがよく使う言葉で表現されるものではありますが、突如として眼前に現れる偶然であり、その瞬間にその場所でしか成立し得ないものです。
本展は文字通り、ゲイリー・ウィノグランドがヘテロセクシャルの視点で女性を賛美した「Women are Beautiful(1975)」に多大な影響を受けています。60-70 年代のアメリカで、都会を道行く女性の漲るエネルギーに反応して撮影されたこれらの写真に感化された蔵は、そのオマージュとして街中で出会う魅力ある男性の撮影を始めました。しかしながら、本作の一点一点に目を追わせると、単純に「Women」を「Men」に変換するだけでは完結しえない、ウィノグランドが女性たちに抱いた礼賛とは違った視点で男性たちに役割を与えていることに気がつきます。
かつて私たちは、時代が進むにつれて女性はもっと開放され、強く自由になれると信じた時がありました。しかしながら今、時代はより複雑さを増し、社会はますます閉塞化されていき、目に見えない制約が私たちを捉えています。蔵は写真家としてだけではなく、そのような状況下で生きる一人の女性としても緊張感を持ってその現実に向き合い、シャッターを押し続けます。
本展ではカラー写真約20 点を展示致します。是非ご高覧ください。
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