この度、NANZUKAは、田名網敬一の新作個展「夜桜の散る宵闇」を開催いたします。
田名網敬一は、1936年東京に生まれ、武蔵野美術大学を卒業。1960年代より、グラフィックデザイナーとして、イラストレーターとして、そしてアーティストとして、メディアやジャンルに捕われず、むしろその境界を積極的に横断して創作活動を続けてきた孤高のアーティストです。
田名網は近年、その主な労力をキャンバスに向けています。特に2010年以降は大作のペインティングを中心に、自身の78年以上もの歴史を記したいわば"曼荼羅図"の制作に取り組んでいます。
例えば、ここには田名網が幼少期に経験した戦争を連想するモチーフが幾多に込められています。光を放つ奇怪な生き物は、擬人化した爆弾と爆発の光。縦に伸びるビーム光線は、アメリカの爆撃機を探す日本軍の放つサーチライト。画面中に登場する骸骨姿のモンスターたちは、戦争で傷ついた人々であり、同時に恐れを知らぬ私たち自身の姿でもあります。田名網が戦争中に記憶した金魚をモチーフにしたキャラクターも多数登場します。
これは田名網の祖父が飼っていた金魚の鱗にアメリカの落とした爆弾の光が乱反射する光景と深く関係しています。まるで動物的な生命を宿したかのように描かれている松は、田名網が44歳の時に胸膜炎を患い死にかけた時に見た幻覚に由来しています。
本展では、横3mの大作の新作「夜桜の散る宵闇」を含む新作ペインティングの他、大型の立体作品などを発表する予定です。新作の立体作品は、2012年に制作された「赤い太鼓橋」をモチーフにした一連のシリーズの新作で、渡ることのできない橋の上に飛行機に乗ったキャラクターが鎮座している力作です。
田名網は、「暗い過去の体験も自身の性格によってポジティヴな表現に変換してしまう」と語っていますが、ここに描かれた世界は、善も悪も、苦悩や恐怖さえも超越した田名網にとっての究極の楽園なのかもしれません。
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