ARATANIURANOでは、1 0月 4日から 11月 1日まで坂本夏子個展 「坂本夏子の世界展」
を開催いたします。
坂本夏子(1983 年、熊本県生まれ)は、2012 年愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了。「絵画の庭―ゼロ年代日本の地平から」(2010 年、国立国際美術館、大阪)、「であ、しゅとぅるむ」(2013 年、名古屋市民ギャラリー矢田、愛知)をはじめとするグループ展に多数参加するほか、梅津庸一との二人展「正しい絵画のつくり方」(2013 年、ARATANIURANO)を開催、3 カ月の滞在制作を経て行われた個展「ARKO 2013 坂本夏子」(2013 年、大原美術館、岡山)が開催されるなど、益々活躍が期待される作家です。
これまで坂本の絵画のなかに存在してきた、歪む空間とその世界観を強固にする独特の色
彩、永遠に終わらない奇妙な戯曲の中に生きているかのような少女達は、わたしたちの中に強
い印象を残してきました。そして 2012 年以後、絵画に宿る物語性を一歩後退させ、描く行為を
前景化した表現へと変化しています。また坂本が常に問題意識として持っている、絵画の中に
しか表すことができない空間への興味がさらに推し進められています。それは、絵を描くとい
う行為自体の反芻であり、絵画の普遍的な器としての美や強度を試す実験であると言えるの
ではないでしょうか。
今回出品される《冬(水仙)》は、花で埋め尽くすという単純な構造のもとに描かれています。
下図はなく、部分部分の完成をパズルピースのようにつなぎ合わせながら描くプロセスは、
《Tiles》(2006)や《overflow》(2008)などといった、坂本の主な作品と同様でありながら、下地
には一転して目覚めるようなまぶしいイエローが塗りこめられています。タッチとタッチの
間からその姿をのぞかせ、描かれているモチーフが花であることを忘れてしまうほど、色彩自
体に関心を向けさせることでしょう。 《夏(犬と坂道)》では、強い日差し、乾いた地面が目に
飛び込んできます。ここでは絵画という垂直な平面の上に、正面からとらえた坂道を描くとい
う試みがなされ、また何匹もの坂道を登る犬たちは、坂道の上にいると同時に、絵画における
空間の不思議に迷い込んでもいます。
ARATANIURANO での初の個展となる本展では、「四季」という普遍的かつ日本人にとっ
ては特に身近なテーマに挑戦し、ギャラリーの壁4面をぐるりと春夏秋冬で囲みます。日本や
アジアというオリエンタルな記号の神秘性に依拠することなく、日本人にとっての絵画を出
現させる坂本の新たな挑戦を是非ご覧ください。ほか新作約 8 点を発表いたします。
〒108-0072 東京都港区白金3-1-15-2F
Tel:03-5422-8320
http://www.arataniurano.com/