「retard」は、フランス語、英語で「遅れ、遅延」を意味します。
マルセル・デュシャンが大ガラス制作に関して「oil on canvas」の代わりに「ガラスの遅延」と名付けました。これはグリーンボックスのメモの原文「retard en verre」からの引用で、英語では「delay in glass」と表記されています。オクタビオ・パスはこの「retard」という言葉を、空間、時間の遅れとともに、音楽用語でもあるという点に注目しています。では「遅延」とは、何でしょうか。
本展は、チャンスオペレーションで選んだ各々4つの鍵盤を押さえたキーボード9台の作品「ROOM 4×9」、独楽の運動と軌跡を捉えたフォトグラム作品「top13040」、そしてアクリル板の裏表にシルクスクリーンをプリントし、観者の立ち位置によりその見え方を変える作品「passage」数点、ステレオスコープを使った作品「HSMD」により構成されます。
「常に絵画の意識をもって制作しています。」という藤本。ギャラリー空間全体を支持体として捉え、全体としても個としても成立する音や物質(作品)を巧みに配置することで、ギャラリー空間に「遅延」を創り出し、視覚の遅れ/聴覚の遅れが、我々の感覚や知覚にどのように現れるのかを試みます。私たちは、視覚、聴覚、触覚、などすべての感覚を駆使して藤本が作り出す「遅延の絵画」を体感することになるのです。
SHUGOARTS
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