朱い色も蒼い色も決して一様ではなく、ほんの少しの違いに複雑なニュアンスが宿り、宇宙を形成している。谷川千佳氏の絵の世界は、そんな緻密さと柔らかさを共存させたアクリルガッシュのタッチが魅力的です。
おもに描かれるのは、所在なげで物憂い表情をたたえた少女たちのポートレート。素足に細い手先、優美な曲線の長い髪など、伝統的な少女画のアイコンを備えつつ、夢から覚醒してすぐ虚を突かれ、宙を舞うような絵の中の視線に、見ている側も深層心理をすくいとられる感触に気づかされます。可愛らしいインターフェイスだけではない、多重イメージが織りなすスケールの大きさが持ち味です。
少女性をフィルターに、グラデーション豊かなパステルトーンを鏡として、現代人の複雑な心象風景までを映し出そうとする洗練されたアプローチ。それらの絵で谷川氏は、GEISAIやULTRA、ART OSAKAなどの主要なアートフェアにおいて近年高く評価され、本の装画なども担当するようになりました。
本展は、彼女にとって1年ぶりとなる東京での個展です。
「言葉では表現しきれない感覚や気持ち、それらにかたちを与え物語を紡いでいくことは、ずっと追求し続けてきたこと」と語る谷川氏は、そうした自身の絵画観をタイトルに込めました。2011年以降のアーカイブから自身のセレクトで構成される他、2013年から取り組んできた新しいイラストレーションシリーズの原画を初めて展示。さらに本展に向けて制作した新作も含め、約35点を展示・販売いたします。また、2014年に発表した初めての画集の他、トートバッグやポストカードセットなどの関連商品も販売いたします。
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