この度メグミオギタギャラリーでは約3年ぶりとなる濱野亮一新作個展「 」を開催致します。
濱野亮一は2006年より独学で絵画という形式を用いて現代美術に取り組んでいる作家です。
濱野を絵画制作に向かわせる動機の最たるは、コンピューターを代表するテクノロジーの進化に対する賞賛と抵抗であります。
1977年生まれの濱野は、急速なテクノロジーの進化により今まで当然のこととして眼前に存在していた「モノ」がその役割を変容させてゆく様を肌で感じながら育ってきました。気がつけばテクノロジーの進歩は人々の行動様式を変化させると共に、不可能をあたかも実現可能であるかの如く現前に差し出すシミュレーションを至る所で生み出し続けている ー 濱野は近代に入り様々な社会学者により提唱されてきた「実存とは何であるか」という問いが、これから更に加速度的に切実な意味を帯びてゆくに違いないことに気がつきます。彼はその答えを、絵画の平面性、すなわち二次元的性質を規定する物質的条件の中に見出そうと、制作を続けています。
19世紀初頭に写真技術が登場して以来、写真は真実を写す道具として捉えられてきました。しかし、メディア技術の著しい発達に伴い、写真についてもデジタル加工が当たり前となった今、モニター越しに映し出される画像、あるいは映像が真実であるという確証を持つ事はもはや不可能に近いといっても過言ではないでしょう。そんな現代において、濱野のだまし絵は、実際に展覧会に足を運び、最も古典的な二次元表現である絵を直接見つめるという行為を通し、そこに秘められたからくりを見破るべく瞳を凝らす鑑賞者に、彼らが今まで忘れていた、あるいは新たな身体感覚を呼び起こします。
濱野の作品は絵画の歴史におけるパラダイム転換を試みるだけには留まらず、これから世界がどこに向かおうとしているのか、現実を現実たらしめるのは一体なんであるのかという、人間の実存を巡る問いに新たな角度から光を差し込むことと同義であるといえるのではないでしょうか。
濱野亮一「 」展、今を呼吸することで生まれる絵画は一体何を更新しようとしているのか、是非ご高覧下さい。
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