本展の中心となるプロジェクト《Fireworks》は、漆黒の夜に鳴りわたる花火の断続的な音と光を通して、わたしたちの意識から追いやられ、深くに閉ざされた記憶の領域を照らし出す試みです。
脳の特定の細胞群に光をあてることで特定の記憶を呼び起こすことに成功した近年の実験結果にも言及しながら、記憶と光の関わりについて探求しています。
出身地であるタイ東北地方の歴史、伝承や記録を参照しながら、作家がこれまでも試みてきた夢や眠りといった主題が変奏され、現在制作中の映画《王の墓》(Cemetery of King)へと引き継がれていきます。
本プロジェクト初作となる《Fireworks (Archives)》(2014年)は、タイとラオスの国境の町・ノンカイに あるサラ・ケオクー寺院で撮影されています。
信者による労働奉仕と寄付により建立したこの彫刻庭園には、ヒンズー教徒と仏教を融合した数々の動物像が配され、開祖の思想を具象化しています。
沈黙してたたずむこれら奇態な群像は、人々の喧騒と陽気な祝祭を暗示する花火に照らされ、プリミティブに鳴り渡る砲音のなか不穏な均衡を生み出しています。
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