2014年8月23日から9月20日まで、原真一 「トロリ」を開催いたします。
1964年生まれ、茨城県出身の原真一は東京藝術大学で彫刻を学び、主に白い大理石を用いた石彫作品を制作しています。1999年キリンアートアワードで賞を受賞後、いくつかのグループ展に参加し、その後も精力的に活動してきました。
山本現代ではグループ展やアートフェアにて原作品をご紹介していましたが、今回満を持しての初個展となります。
本展タイトル「トロリ」はその言葉の通り、溶けている様は、岸田劉生が提唱した「デロリ」※から着想を得ています。『「デロリ」からアクを抜いた』と作家が言うように、原の作品は雪に覆われた大地にように一見静謐で美しい佇まいをみせています。しかし、よく見ると手や耳、歯と歯茎などの体一部や、亡霊のように佇む髪の長い女性など、奇異の世界に迷い込んだような静的な恐怖を感じさせます。
新作《あやとり》(2014)は、ゴツゴツの岩肌と、ツルツルに磨かれ美しいマーブルを露にした側面を持つ大きな石の内側が白魚のような指と紐が絡まり、溶け合った形をしています。電子ゲームの出現により、古き良き日本の遊びがだんだんとなくなって行く様子を、溶けるという進行形で捉えています。
東北の雪景色を表した《春の雪》(2014)は、その中心が高熱によって徐々に溶け落ちたかのごとく、穴が空いています。これは私たちが見ることは出来ない(仮に見るとすると自分の体まで溶け崩れてしまう)炉心溶融を連想させます。また改めて一歩引いて全体に目をやると、大きな長方形の上に緩やかに掛けられた日本の国旗〈日の丸〉を象っていることがわかります。どちらの作品も妖艶で滑らかな作品ですが、現代の電力依存をアイロニカルに表しています。
溶解によりある個体が別のものへ変容する過程の状態を独特の質感を持って彫り続ける原真一作品を、この機会に是非ご覧ください。
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