この度メグミオギタギャラリーでは第二回目となるサイトウ・P・ヒロヒサの新作個展を開催致します。
サイトウ・P・ヒロヒサ(斉藤洋久, b.1954)は、ペプシマンやアンディ・ ウォーホールのTDKビデオカセットテープ等、数々のヒットCM作品を世に生み出し時代を牽引し続けてきた日本を代表するCFプロデューサーです。
自身も膨大な数のコレクションを有するサイトウの審美眼は、アートのみならず自分が身につける品、あるいは自分が身を置く空間の全てに対して網の目の如く張り巡らされています。
その千姿万態なコレクションは、脅威の部屋を彷彿とさせます。驚異の部屋とは15世紀から18世紀にかけてヨーロッパで作られていた、珍品であれば自然物も人工物も分野を隔てず一所に取り集め、今日の博物館の前身となった博物陳列室です。一流のアート作品も蚤の市の片隅で見つけた民藝品、あるいは道ばたで拾ったものでさえもが一様にサイトウの感性を基軸として集められ展示された彼の自宅や事務所は、まさしく現代の驚異の部屋とよぶに相応しい空間です。
サイトウのコラージュ作品は、「コレクション」をその出発点としています。ダミアン・ハースト、村上隆ら、一流と呼ばれるアーティストの多くが、自身もコレクターの顔を持ちます。
大量消費時代を迎え、商品が使用価値としてだけでなく記号として立ち現れることを説いた偉大なフランスの哲学者であるジャン・ボードリヤールは、コレクションとは事物が本来有する実用的機能から切り離され日常とは別の体系に組み込まれることであると説きました。コレクションという行為自体、現実を構築し直すシミュレーションの概念を内包しています。
シミュレーションアートの最高峰であるジェフ・クーンズは、かつてビニールの人形を金属に鋳造し直し、現実の再構築を図りました。
消費時代の最中において一時代を築いたプロデューサーとして誰よりもその構造を熟知するサイトウは、コレクションとコラージュという二段階の構築プロセスを重ねていくことにより、ジェフ・クーンズがその時代において成し得なかった最強にして最先端の芸術行為、本物のクリエイションに挑みます。
今展では、映画女優からモンスターまで、全て自身が世界各地を周りコレクションしてきたアンティークの雑誌のイメージを、縦横のグリッドの中に収めたコラージュ作品を中心に発表します。
特に、二次元のコラージュ作品をつくるプロセスをそのまま三次元の棚に転化した立体作品は圧巻です。
まるでひとつの棚にコレクションが収集されていくように、サイトウにとっては展覧会そのものでさえ彼の企む途方もない驚異の部屋を彩る一場面に過ぎず、謎に包まれたその全貌は展覧会が回を重ねてゆく中で徐々に明らかになってゆきます。
新たな世界を立ち上げるクリエイトという言葉は、神の創造という意味を持ちます。サイトウの行為は大胆にして不敵な神への挑戦といえるでしょう。
コレクションという行為は芸術表現になり得るか、Pの眼の第二弾に是非ご期待下さい。
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