私の制作は、場を観察することから始まります。
観察することで発見した場の「ほころび」を利用し、その場に対し何の脈略も無い存在である"やつら"を出現させるような感覚があります。それはまるで、魔法使いが魔法陣を描き、そこから幻獣たちが出現するようなイメージを抱けるかもしれません。私たちのいる場所、つまり、まさにそれが出現する場である"こちら"に対し"あちら"の存在である"やつら"は、私にとって、今とても大切な存在なのです。
"やつら"には、消滅したサッカーチームのマスコット、過去のオリンピックのマスコット、雅楽の演目の登場人物などがいます。それらは、大人の事情により表舞台に出る事がなくなってしまったやつ、今現在ずいぶんと影が薄くなってしまったやつなどです。私自身、現代美術をやるぞ!!と決心したものの、シーンに消費され過去の人となってしまう事に強烈な恐れを抱いてしまいます。それ故に、私は、その境遇の先輩である"やつら"を、まだまだいけてるよ!!と、半ば強引に、明るみに引っ張り出しているのです。私の与えられた場に、"やつら"をもう一度パワフルに存在させられる事は、私にとって勇気と希望(!!)を生み出す行為そのものなのです。
今回の個展では、TALION GALLERY の壁を使って蘭陵王を出現させます。この西日暮里にあるTALION GALLERY の空間が、今回の展示を最後に移転してなくなってしまうことは、新参者の僕にとってもちょっぴり悲しい出来事です。その気持ちを大切に、私は作品のプランニングを開始しました。
個展のタイトルは「TALION の子」、この西日暮里 TALION が蘭陵王としてこの世界に在り続けることは、私にとってとても素敵なことなのです。
山下拓也
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