「オープン・スペース 2014」展は、メディア・アート作品をはじめ現代のメディア環境における多様な表現をとりあげ、幅広い観客層に向けて紹介する展覧会です。
メディア・アートの代表作、先端技術を取り入れた作品などが展示され、作品を楽しむだけでなく、その背景にある現代の多様化したメディアやコミュニケーションの在り方などについて考えるきっかけとなることをめざしています。
会期中には、アーティストや有識者を招いたトーク、レクチャー、シンポジウム、ワークショップや学芸スタッフによる作品解説ツアーを開催するなど、さまざまなプログラムを用意しています。
※オープン・スペースとは、2006年より開始されたギャラリーでの年度ごとに展示内容を変える展覧会、ミニ・シアター、映像アーカイヴ「HIVE」などを入場無料で公開するものです。
ICCの活動理念にもとづき、より多くの方々に先進的な技術を用いた芸術表現とコミュニケーション文化の可能性を提示する開かれた場として機能することをめざしています。
阿部修也《パイク=アベ・ヴィデオ・シンセサイザー 1972年版レプリカ》(出力画像)2012年
出品作家および作品(五十音順)
阿部修也 《パイク=アベ・ヴィデオ・シンセサイザー 1972年版レプリカ》 2012年
アナログ機器からの電気信号を入力してヴィデオ画像を変調させる、自作のヴィデオ・シンセサイザー。
アーティストのナムジュン・パイクは、このシンセサイザーを用いて制作したヴィデオ・アート作品などによって、ヴィデオという電気信号によって再現される電子映像が、電気的に加工可能な素材であるということを示しました。
本展では,パイクと共同で制作されたもののレプリカを展示します。
岩井俊雄 《マシュマロスコープ》 2002年
マシュマロのような形をしたオブジェの中を覗き込むと、リアルタイムに映っている映像がゆがんだり伸びたり縮んだりします。ヴィデオカメラでとらえた映像をコンピュータに蓄え、画面ごと、あるいは部分的に映像の送りだす時間を変化させることで、時間とその空間の様子が変化します。
(2006-13年度オープン・スペース展示作品/継続)
evala+鈴木昭男 《大きな耳をもったキツネ》 2013年
最新鋭の立体音響特殊マイクロフォンによって録音された音を素材とし、さらに音響的変化を伴う音の運動を再構成して作曲された8.1ch立体音響によるサウンド・インスタレーション。
暗転の中、楽器が巨大化したり耳が水であふれたりといった通常の聴覚体験では得られない音響的イリュージョンとでもいうべき現象が体験できます。楽曲は会期中に追加される予定です。
(2013年度オープン・スペース展示作品/継続)
逢坂卓郎 《生成と消滅 2012》 2012年
地球上に降り注いでいる宇宙線を発光ダイオード(LED)の明滅によって視覚化するインスタレーション。
ギャラリーに設置されたセンサーが宇宙線を検知した瞬間、発光ダイオードが明滅します。
絶えず明滅を繰り返す静かな光は、私たちの周りに無数の宇宙線が絶え間なく飛来していることを教えています。
(2012-13年度オープン・スペース展示作品/継続)
リヴィタル・コーエン&テューア・ヴァン・バーレン 《The Immortal》 2012年,《Nowhere A Shadow》 2013年
コーエン&ヴァン・バーレンは、プロジェクトごとに科学者や専門家の協力を得ながら、アートとデザインの境界上で作品を発表しています。
本展では、人工心肺や透析装置などの生命維持装置のみで人間の生体活動を模倣した《The Immortal》と、人工的環境と動物との奇妙な共生関係を描いた《Nowhere A Shadow》という二つの映像作品を図面とともに展示し、わたしたちの生命観や自然と人工の関係について疑問を投げかけます。
スティーヴン・コーンフォード 《バイナトーン・ギャラクシー》 2011年
ケーブルで接続された多数のカセット・レコーダーで構成されるサウンド・インスタレーション。
聴こえてくる機械音は、カセットに録音された音ではありません。カセット・レコーダーが再生、停止、早送りなどの挙動に伴って発する駆動音をマイクロフォンで集音し、そのまま増幅しています。カセット・レコーダーという装置がもつ録音再生以外の機能的なポテンシャルに着目し、あらたな装置へと変容させています。
(ZKMコレクション)
志水児王 《linnerscope》(仮題) 2007-14年
長細い水槽を様々なパターンで動かし、それに伴って生じる水槽内の水の運動を複数のレーザー光線を用いて観察する作品です。
レーザー光線を水面に線状および面状に照射することで、水を直接見るだけでは把握しきれない微細な運動を視覚化します。
またレーザーの状態を変化させることで、観察状態を変えながら水の運動の表れを変化させ、水の運動の表れを変化させダイナミックな映像を生じさせます。
ジェフリー・ショー《レジブル・シティ》1988-91年
メディア・アート黎明期に制作され、インタラクティヴ・アートの代表作としてよく知られた作品。
スクリーンに映しだされたマンハッタン、アムステルダム、カールスルーエの街を自転車で自由に移動することができます。
鑑賞者が自転車をこぐと、建物の代わりに配置された文字が次々に並置され、また混ぜ合わされていきます。
本展では、ZKM(カールスルーエ,ドイツ)における「デジタル・アートの保存プロジェクト」によって再制作されたものを展示します。
(ZKMコレクション)
谷口暁彦 「思い過ごすものたち」
日用品とiPadやiPhoneを素材にした彫刻作品です。人は日常的に、あれこれと考えすぎて、しばしば現実とはズレた認識や理解、つまり思い過ごしをしてしまうことがあります。
この作品では、意図的にそのようなズレた接続や配置を試みることで、コンピュータによって作られた虚構と現実とが、因果関係で結ばれているかのような錯覚を起こさせています。
グレゴリー・バーサミアン 《ジャグラー》 1997年
アニメーションなど映像装置の原型ともいえる原理を応用したストロボの光を利用した立体的アニメーションです。受話器を手にした人体がそれを中空に投げ上げると、放り上げられた受話器は哺乳壜、サイコロなどへと形態を変容させながら再び人体の手へと戻ってきます。
残像の原理を利用して、人間と機械の間にある希望と葛藤を表現した作品です。
(ICCコレクション作品)
ユークリッド(佐藤雅彦+桐山孝司) 《指紋の池》 2010年
液晶ディスプレイに多数の指紋が魚の群れのように泳いでいます。指紋採取装置で指紋をスキャンすると、自分の指紋がディスプレイに放たれます。いちど群れに入ってしまうと自分の指紋を認識することは難しく見失ってしまいますが、もう一度指紋採取装置に指を置くと群れの中から自分の指紋が帰ってきます。
普段は気にも留めない自分の属性のひとつである指紋というものに対して「いとおしさ」や「いつくしみ」が生まれる作品です。
ダニエル・ローズィン 《Twisted Strips》 2012年,《Mirror No.12》 2013年
ダニエル・ローズィンは、整然と配列された物が個別に動くことで生じる陰影やパターンによって、作品の前にあるものを鏡のように映しだすインタラクティヴな彫刻的作品を制作する一方で、ソフトウェアでも鏡をモチーフとしたインタラクティヴ作品を制作しています。
《Mirror No.12》はそのひとつで、カメラによって撮影された映像が絵画的なテクスチャーと運動する筆触によって再現されます。
《Twisted Strips》は、複数の短冊状の物体が動きながらさまざまなパターンを描きだす動く絵画のような作品です。
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