出展作家:あるがせいじ、磯部勝士郎、神庭祈永歌、児玉香織、塩見友梨奈、悠、森本愛子
今回グループ展のタイトルである「700nm(ナノメートル)」とは国際照明委員会 (CIE)が「赤」と規定している光の色の事である。しかしながら、この展覧会においては単純に赤色を使う、といった作品だけではなく、赤が感覚的に表現されたものをも含んでいる。
ところで、赤は、物理的な波長のみで、あるいは眼への生理的な刺激としてのみ語られるものではない。色にはその民族がもつ価値観が象徴的に意味づ けされていくからである。特に赤は、多くの象徴性をもつ色のひとつ。
古来、聖母マリアのマントの色として使われてきた赤は、神の子による購いの血の色である。これは、近年において革命で流された血の色として国旗な どに使われている。
日本では太陽の色としてあがめられてきた。西洋では太陽を黄色=光、として捉えているのとは対照的である。もちろんその結実は日の丸の赤に他なら ないが、同じものが国によって違う色で表象されるという面白い事例といえよう。
もちろん、日本にも赤と血の関連性をもった例がある。還暦になると赤いちゃんちゃんこや、赤い座布団が送られるか、これは新たな生命力(血)を与える象徴となっている。
赤は太陽の他、火の色でもあるが、それゆえにエネルギーを感じる色でもある。実験によると、赤い色を見ているだけで体温がわずかに上昇するらし い。それゆえに、情熱や熱血という象徴性もある。これは国旗の色として、情熱(イタリア)、博愛(フランス)、勇気と正義(インドネシア)などに 現れている。
1995年、バーゼルのギャラリー・バイエラーは「誰が赤を畏れるか?」と題した赤色を中心とした近現代美術の逸品によるグループ展を開催してい る(もっともこれはバーネット・ニューマンの60~70年代の連作のタイトルを元にしているが)。およそ20年、期せずして京都en artsにても「eeny, meeny, miny, moe| red」と題した、赤をテーマにした作品展が開催された。表現を巡る様々な紆余曲折を経て再び視覚という原点に立ち戻る時期が来ているのかもし れない。
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