木枠の中に貼付けられた蛙の顔をした女性のドローイングは、可憐なレース生地に封印されるがごとくやさしく包み込まれている。自身の経験、記憶を通じて生み出されるペインティングは抽象化されたモチーフにレースが覆い被さり、中に埋め込まれ、時には引き剥がされる。
太古から続く生と死の繰り返しをテーマとして、とりわけ生きること、つまり生命の今存在している姿をこれまで取り扱ってきたセラツヨシの作品は、 現在レースの使用を特徴として制作されている。
レースの歴史は古代エジプトに始まりヨーロッパへ伝わったとされ、当初甲冑の装飾に使用されるなど女性よりも男性のほうに需要があり、 特権階級のものであったが、製造技術の発達と共に一般に広まりファッションに豊富に用いられるようになった。今では女性の下着に欠かせない一部となって、 その存在さえも意識させないほど日常に溶け込んでいる。この推移はこれまで辿った美術のそれの様でもあり、また、ロマンティックでフェミニンな、 清楚あるいはセクシーなイメージに加えて、繊細な外観や独特の光の効果によりインスピレーションが誘発され、細く弱々しくゆらぐ細かい網目の分岐はどこか人の一生を彷彿とさせ、規則的に並んだ幾何学的な模様は曼荼羅のようにも見え、無限に広がる宇宙へと導くのである。
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