大木裕之(1964年東京都生まれ)は、東京大学工学部建築学科在学中の80年代前半より映像制作を始め、卒業の翌年に制作した「遊泳禁止」(1989)でイメージフォーラム・フェスティバル1990審査員特別賞を受賞後、1991年より高知県に制作活動の拠点を置きます。1995年には「天使の六つの箱 HEAVEN-6-BOX」(1994-95/高知県立美術館制作)で、第46回ベルリン国際映画祭ネットパック賞を受賞し、その後も数多くの映画祭にて作品が上映されています。
本展では、"マテリアル"をテーマに、東北、アリゾナ、中国、コンゴで撮影を行った新作「みつめつつユみ」、1989年よりスタートした北海道松前町にて毎年冬撮影される「松前君シリーズ」の最新作、高知県出身の具体作家・高崎元尚を映した作品「白鏡」(1998-)などの上映・展示を予定しています。
「松前君シリーズ」は、「松前君のための映画」(1990)、「松前君の死のための映像」(2002)を素材に2014年の撮影シーンを加え、24年の時間の流れをとどめた最新作「松前君のまんじまんじゅのための映画」を発表いたします。同じ土地、同じ季節に重ねられる撮影によって綴られていた3作品の時間が多層的に混じり合う本作は、定点観測とも日記とも異なる様相へと昇華されていきます。そして10年後のいま見つめ直され、新たな編集が行われた「松前君の旋律Ⅱ」(2004)も併せてご覧頂けます。
また、1995年高知県立美術館にて開催された「クールの時代、美術のノイズ・ミュージック」展において大木と共演し、同展のために企画制作された「HEAVEN-6-BOX」(1994-95)にそのパフォーマンスシーンが収録されている、高崎元尚(1923年高知県生まれ)の作品《装置》シリーズも展示いたします。
高崎は、1949年東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科を卒業し、具体美術協会の会員として数多くの展覧会に参加しました。近年では具体の大規模回顧展である、2012年国立新美術館で開催された「具体-ニッポンの前衛 18年の軌跡」、2013年ニューヨーク・グッゲンハイム美術館での「GUTAI:SPLENDID PLAYGROUND」にも参加するなど、現在もなお国内外で高い評価を得ています。
高崎が展開する《装置》シリーズは、黒い画面上に等間隔に貼付けられ、ひとつひとつ中心で固定された複数の正方形の白いキャンバス地が、時間の経過とともに反り、かたちを変化させていきます。静かに現象/時に身を委ねるかのようなその姿からは、大木の映像作品がとどめる時の流れとも繋がりを見せると同時に、互いがもつ"時間"というイメージを交差させるかのように展示空間のなかで構築されていくコラボレーションとしての様子もご覧ください。
〒108-0072 東京都港区白金3-1-15-2F
Tel:03-5422-8320
http://www.arataniurano.com/