ふたりのアーティストのクリエイションをひとつの空間にパッケージする「Duet series」。
その第一弾として、ペン画の増子博子と陶芸の桝本佳子をフィーチャーいたします。
「盆栽」が種から成長していく過程をイメージの起点に据え、ボールペンによる緻密な描写で、時に壮大なスケール感を彷彿とさせる情景を紡ぎ出す増子博子。ユーモラスな佇まいに育った盆栽を描いた一連の作品群を経て、その表現はぐんぐんとまさに枝葉を広げ、実に多彩なヴァリエーションを獲得するに至っています。今回は初めての試みとして黒い下地に銀色の線の構成による新しいシリーズ「Artifact」の作品を中心に発表いたします。
桝本佳子は陶芸の表現や手法としてはオーソドックスな感触を保ちながら、器や壷と、まったく別の要素とを大胆に交錯させ、観るものの既成観念を軽やかに越え、意表を突くユニークな造形を創作します。手仕事をしっかりと感じさせるあたたかみに満ちた作品で、滋味にも富み、その独特のやさしい風合いで鑑賞者を魅了します。今展では「白」「雪」というモチーフを採用し、比較的抑制を効かせた色合いの新作を展示予定です。
このふたりの作品にはそれぞれのユーモアがしっかりと表現の軸の部分に備わっています。予想外のかたちへと育成していく盆栽の華々しさや、異なる縮尺を飄々と共存させてしまう意外性といった表現としての緊張感を忍ばせながら、観ていて思わず笑顔がほころんでしまうような「おかしみ」が増子、桝本両アーティストの個性の重要な部分の一端を担っているのです。こういった個性がいっしょに展示されるときに生み出される響きや、同時に鑑賞して得られるイメージの広がりや深まりを堪能していただければ幸いです。
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