現代美術家・天明屋尚が今、最も注目する新世代彫刻家・淺野健一の個展をhpgrp GALLERYにてご紹介致します。
これまで変身、憑衣、傀儡といった、ある媒介を通じて、それまでの自分とは別の新しい化身になること、それにより力を得ることをテーマに制作を続けて来た淺野。
今回は、異世界にアクセスするための「面」を媒介とした作品「剛の者」を発表します。能の世界の作法に則って、金色の眼を宿したその駆動可能な異形(サイボーグ)は、この世を超越した彼我を志向する一方で、その外殻は色鮮やかに発光する兜と甲冑の面頬、小手と脛当てが宛がわれ、その圧倒的な強さ故に神格化された人間を表現しています。古典技法と近未来的な感覚とがアクロバティックに融合し、作家の持ちうる限りの精と技巧が集約された作品は、まさに華美にして覇格のハイブリッド、BASARAと呼ぶにふさわしいでしょう。BASARAとは侘び・寂び・禅の対極にあり、オタク文化とも相容れない華美で覇格の美の系譜。日本の抑圧的な社会構造からは逸脱した、ハイブリッドな魅力を称える戦国時代のかぶき者や幕末の絵師たちの伝統に連なる系譜です。
固定化された客体であること、即ち彫刻的であることをかなぐり捨て、どこまでも人間主体の投影たらんとしたサイボーグは、この世の理を超越した現し身とすら言えるかもしれません。「面」というデバイスを通じて、極限にまで拡張化されたアバター、即ち、「剛の者」と対峙する時、観賞者は一体、どこへ連れ去られるといふのか。新世代作家による、古くも新しき神、ここに降臨。メインの作品である「剛の者」の他に、新作5点を予定しております。
天明屋プロデュースによる淺野作品群を、この機会にぜひご高覧下さい。
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