狩野哲郎は、既製品や種子・果実といった植物を組み合わせることで、空間へのドローイングとしての新しい「風景」を造り出してきました。2009年から取り組んでいるインスタレーション「自然の設計/Naturplan」では、時に作品の中に野鳥が入りこみ、人間にはコントロール出来ない「他者」が内包されます。こうした狩野の作品世界では、モノや空間があらかじめ持っていた意味や機能から逸脱して扱われることで、人間にとっての価値観や認識方法が宙づりにされ、普段、私達が意識することのない新たな知覚や複数の世界認識の存在を想像させます。
狩野はこれまで、滞在型制作のプロジェクトを中心にインスタレーション作品を展開してきましたが、それと並行して、マスキングテープなどを用いた平面のドローイング作品も制作しています。本展では、形式上は区別される空間のインスタレーションと平面のドローイングに共通する問題を扱う作品として、「オブジェの造形物としてのあり方」に焦点を当てた「野生のストラクチャ/ Savage Structures」を展示いたします。この新シリーズでは、新たな世界認識を示唆することでモノや場所の意味や価値を問い続けるとともに、インスタレーションでありながら、彫刻としても成り立っていく狩野作品の新たな側面を見ることができます。
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