たぬきから、何が書いてあるのか分からない手紙が届く。文章を「た」抜きにすると文章が読めるようになる。黒川は「た抜きの暗号」をもじってたぬきを黒いペンで描く。
白い紙に黒い線が走り、現れたたぬき。そのタヌキの輪郭の内と外は、白く抜かれたように描き残されている、それを「空白」(=blanc)とよぼう、そしてその空白を生む黒い線を「境界線」(boundary line)とよぼう。そのドローイングを黒川は白黒反転させる。当然黒い線が白くなり、白い面が黒い面となる。空白という本来の意味を纏っていたはずの白い面が黒い面となったとき、黒川は一転して白い修正ペンで黒を消しはじめる。黒から白へ。
どんどん黒が減り、白くなるにつれ、描かれていたたぬきの存在も白い面に埋没し始める。黒川は、黒い面をその起源である空白へと、白いペンを走らせる。あたかも面に刻まれているはずの記憶を修正するかのように。
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