12月にご覧頂きたい展覧会は画業30周年を迎えた漫画家、上條淳士初画集の刊行を記念した展覧会です。
上條淳士は1983年にデビューし、『TO-Y』や『SEX』といった作品で、各界に大きな衝撃をもたらしました。ロックミュージシャンや沖縄のアウトロー、格闘家といった危険と隣り合わせの人物像を描きつつも、そこに流れる空気は静謐。危うい生に宿る、張りつめた一瞬の美を描き出した作家です。彼は自身の作品世界に、愛する音楽や映画、写真、文学、ポップアート、グラフィックデザイン、イラストレーションのエッセンスを巧みに入れ込み、絵と物語の総合芸術として漫画を生み出してきました。漫画は省略と凝縮によるデフォルメの文化だと言われますが、上條は描線を選り抜き、削ぎ落とし、最後に残された繊細なフォルムに注力した作家です。精悍な男の魅力や優美な女性の艶を鋭くとらえ、風景や無機物も同等の存在感で描き出していく。研ぎ澄まされたペンと、緻密なドットの集積であるトーンを重ね合わせた画面は、モノクローム表現の最たる成果と言えます。
今展では、初期の漫画作品のペン画から、資生堂の広告、NIKEやadidas、各ファッションブランドとのコラボレーション作品や近作まで、幅広く展示致します。ペン を一切使わず、ナイフでトーンを削り出して仕上げた人物画も特筆に値する傑作です。展覧会では描き下ろし作品も予定しております。
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