阪本トクロウは 1975 年山梨県生まれ、1999 年東京藝術大学美術学科絵画科日本画専攻卒業、最も作家本人に適した画材として選択された雲肌麻紙とアクリル絵の具 により、コンスタントに制作と発表を続けています。
近年作品は、作家が生きる日常的で身近な風景を自ら撮影した写真をもとに制作し、そこにある性質や共通性に着目して描き出すことで、描かれた風景は余分な要素を 捨象し、具象作品でありながら極めて抽象性が高いものとなっています。
それだけに特定された場所にも関わらず、どの人にも見たことのある身近な風景として印象付けられ、描かれた風景を共有し共感を抱かせることになります。それは作 家と鑑賞者が交差し、現在と過去が交差する場として、意識的に描かれています。
余分な要素を取り除いた画面は、一見伝統的な日本画を思わせフラットですが、画面と対峙するとき、そこには空気の皮膜や温度さえも感じさせ、奥行きと現実感をも たらしていることに気付かされます。それは恐らく描写される風景の手前に作者の眼差しがあり、人物が描かれないまでも、その存在を彷彿とさせるためです。 阪本作品は抽象性と現実感が矛盾なく結合し、静謐な画面と空間は禅の境地に連なるようであり、淡々と描きながら作家の思索の痕跡を見るようです。さりげない風景や 対象物が見るものと等価、または超えた存在として提示され、日本的な自然感も感じさせます。
今展では、30 点ほどの「背景」をテーマにした、より一層シンプルな作品が展示される予定です。
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